原発避難者から住まいを奪うな

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【原発避難者から住まいを奪うな】「福島県がしゃしゃり出て提訴」「訴えは門前払いされるべき」避難者側が改めて主張 内堀知事の証人尋問も申請~第6回口頭弁論

  • 2022/03/26 民の声新聞

福島県が2020年3月、区域外避難者4世帯を相手取り国家公務員宿舎「東雲住宅」(東京都江東区)の明け渡しと未納家賃の支払いを求めて提訴した問題で、審理が併合された2世帯に対する第6回口頭弁論が25日午後、福島地裁203号法廷(小川理佳裁判官)で行われた。被告(避難者)側は5つの準備書面と、国際人権法の専門家で青山学院大学法学部長・申惠丰(シンヘボン)教授の意見書を提出。住宅提供打ち切りの張本人である福島県・内堀雅雄知事ら計6人に対する証人尋問を申請した。小川裁判官は被告本人尋問のみ採用してお茶を濁す姿勢を露骨に示したが、代理人を務める柳原敏夫弁護士の抵抗で採否は保留した。次回弁論期日は5月24日14時。

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【国際人権法に基づく居住権】
 この日の弁論は20分ほどで終了した。
 被告(避難者)側が第9~第12準備書面を陳述。
 「被告主張の集大成」と題された第9準備書面(35ページ)では、福島県による区域外避難者への住宅提供打ち切りが社会権規約第11条第1項の「適切な住居」に適合するよう解釈された災害救助法等の内容に違反する裁量権の逸脱・濫用と言わざるを得ず、違法を免れない―と改めて主張している。
では、「2017年3月末をもって応急仮設住宅の提供打ち切りを決定したことは災害救助法施行令第3条第2項に違反し、違法。被告(避難者)には国際人権法に基づく居住権があり、占有権原が与えられる」と結論づけた。
 「原発事故の発生により国内避難民となった区域外避難者が入居した応急仮設住宅について、災害救助法施行令第3条第2項等を社会権規約第11条第1項の『適切な住居』に適合するように解釈すると次のようになる。
1)強制退去、嫌がらせ及び他の恐れを受けることなく、継続的な居住が保障される。
2)1)の例外的措置として強制退去(住宅提供の打ち切り)が認められるのはa:最も例外的な状況において、b:すべての実行可能な代替案が検討され代替措置(住居)の誠実な提供があったこと―の2つの要件が備わった場合に限られる。
3)たとえ1)の例外的措置として強制退去が認められる場合でも、退去の移動先が国内避難民自らの生命・安全・自由もしくは健康が危険にさらされるおそれのある場合には、強制退去(住宅提供の打ち切り)は許されない」
では「福島県知事は(住宅提供打ち切り決定の)判断の各過程において、本来行われるべき正しい判断がなされていたら『2017年3月末をもって応急仮設住宅の供与を終了するという決定』とは異なった結論に到達する可能性があったものと認められ、この意味で、本来行われるべき正しい判断を行わなかった福島県知事の判断は、その裁量判断の方法ないし過程に看過しがたい重大な過誤があるものとして違法を免れない」と主張している。
 被告(避難者)側は一貫して国際人権法上の居住権を主張しているが、小川裁判官はこの日も「(被告の言う)占有権原とは何なのか?」と再三にわたって質問した。柳原敏夫弁護士は改めて「国際人権法が保障する居住権という意味」、「国際人権法の国内避難民に与えられる居住権が被告らにも保障されるという主張です」と説明した。

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2世帯の代理人を務める柳原敏夫弁護士。被告本人の尋問だけでお茶を濁そうとした小川裁判官に猛烈に抗議した=福島市アクティブシニアセンター・アオウゼ

【「県は原告適格を欠く」】
 そもそも福島県が原告となり得るのかについて論じた第12準備書面(7ページ)では、裁判所に対し「原告適格を欠く。訴えは却下されるべきだ」と求めている。
 書面で被告(避難者)側は「なぜ福島県が原告として明渡し請求の主体になれるのか」、「なぜ、いきなりしゃしゃり出て原告として本件建物を明け渡せと提訴できるのか」と改めて問題提起。
 原告(福島県)が主張する「債権者代位権」について、本来は被曝リスクから逃れるため都内に避難した県民に対して「住宅の用に供する」ために使用許可を得るのが本来の福島県の姿であるのに、追い出し訴訟を提起するために国から使用許可を得て、国家公務員宿舎の所有者でもない福島県がそれを県民を追い出すために使っている―という趣旨の主張を展開している。福島県は2020年3月25日にこの訴訟を提起した翌日、財務省に対し使用許可を申請しているからだ。
 この理屈は既に結審した他の2世帯の審理(退去や未払い家賃の支払いを前提とした和解協議が続いているため判決言い渡しが延期されている)でも用いられたが、福島地裁は取り合わなかった。
 原告(福島県)が2月22日付で提出した第3準備書面によれば、区域外避難者に対する住宅無償提供の打ち切りは2015年6月15日に開催された「第42回新生ふくしま復興推進本部会議」で決定された。
 同会議の本部長は、内堀雅雄知事が務めている。そこで、被告(避難者)側は被告2人のほか、国際人権法の専門家2人(青山学院大法学部の申惠丰教授、専修大法学部の内藤光博教授)、東京都都市整備局幹部、そして内堀知事の計6人に対する尋問を申請した。内堀知事への尋問が実現した場合、住宅提供打ち切り決定に関する経緯や福島県外に復興公営住宅を建設しなかったことなどについて質す意向だ。
 閉廷後の報告集会で、柳原弁護士は「無関係な福島県がいきなりしゃしゃり出て裁判を起こすなんてあり得ない。本人尋問なんて一番最後で良い。まずは福島県の訴えを門前払いするのかどうかをきちんと審理して欲しい。それがクリアされたら初めて土俵に上がって国際人権法などについて論じる」とこの日の弁論を振り返った。
 内堀知事に対する証人尋問については「県は書面で打ち切りを決定したのは知事ではなく会議。会議が主体だ、と言ってきた。しかし、これはインチキ。災害救助法施行令第3条第2項に、打ち切りの権限があるのは都道府県知事だと書いてある。法律の条文に違反することをやっていることになる。知事を守りたいのだろうが、この問題は内堀さんを呼ばなければ分かりません。すべては彼にかかっている。責任者たる内堀知事抜きに真相解明はあり得ない」と語気を強めた。

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区域外避難者への住宅提供打ち切りは、2015年6月15日に開催された「第42回新生ふくしま復興推進本部会議」(本部長は内堀知事)で決定された

【「打ち切り正当化できぬ」】
 意見書(27ページ)を書いた申教授は「国際人権法学会」の理事長を務めたことがあるなど、国際人権法のエキスパート。著書に「国際人権入門~現場から考える」(岩波書店、2020年8月)や「友だちを助けるための国際人権法入門」(影書房、2020年4月)がある。
 「社会権規約は日本が批准し、国際法上の遵守義務を負っている条約」であり、「司法判断において人権条約の規範に依拠することは、条約の誠実な遵守という国際法の大原則に合致する」と確認。そのうえで、福島県が2017年3月末で区域外避難者に対する住宅提供を打ち切った政策決定を「それ自体が放射線被曝防御の観点からはおよそ正当化できない」と指摘。居住権に関する社会権規約の規定に照らしても「福島県の本件明渡請求とこれに関連する一連の措置は、明らかに違法性を帯びている」と結論づけている。
 内堀知事は2015年6月15日の「第42回新生ふくしま復興推進本部会議」で、区域外避難者に対する住宅無償提供打ち切りについて次のように述べている。
 「震災・原発事故から4年が経過いたしました。復興に向けて、前に進んでいる部分がある一方で、11万2000人もの方々が避難生活を続けていることは、福島県にとって、極めて大きく、そして重い課題であります。避難者を取り巻く状況も刻々と変化し、課題も複雑化してきており、避難者の方々の生活の再建・安定や不安の解消のため、今年度から生活支援相談員や復興支援員を増員し、体制を強化しました。そうした中で、避難地域復興局長から報告があったように、公共インフラの復旧、除染や復興公営住宅等の整備も進み、生活環境が整ってきた中、災害救助法に基づく応急救助の継続が難しくなってきており、福島県として、供与期間を1年延長した上で、その後は特定延長による対応や新たな支援策への移行に踏み切るという判断に至りました。これから2年弱、現行制度が継続をした上で、次の段階に入っていくという考え方であり、引き続き避難者の思いを尊重しながら、きめ細かな支援が可能となるよう、全庁一丸となって取り組んでまいりましょう」
前回2月の弁論期日で、小川裁判官は被告(避難者)2人の本人尋問を行うとして4月26日を指定。この日の弁論でも本人尋問のみ採用し、内堀知事など他の証人への尋問は却下する姿勢を一度は示した。しかし、被告(避難者)代理人の柳原弁護士の講義で採否を保留。次回5月の弁論期日までに、まずは被告側から出された「原告不適格」の主張に対する福島県の認否・反論を待つことになった。

(了)

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