原発は、事故を起こさなくても日常的に放射性物質を放出しています。その結果、世界の原発周辺で病気が増えている事例が報告されています。
ドイツ・連邦放射線防護庁の疫学調査 では原発から5km以内の小児がん発病は5km以遠に比べて 1.61倍、小児白血病が2.19倍と報告されています。日本ではトリチウム放出量が最も多い佐賀県の玄海原発周辺で、原発稼働後に白血病死亡率が急増している明確なデータが報道されました。
【玄海原発と白血病死亡率の因果関係】
原発稼働後、約6倍に増加
驚愕の数値、専門機関による詳細な調査が必要
(2019年3月5日 壱岐新報)
玄海原子力発電所と原発周辺自治体との白血病死亡率増加について、原発と白血病発症についての因果関係を調べている魚住昭三弁護士(長崎市)と、市防災士会の辻樹夫会長が公表した資料から、本市における白血病死亡率の詳細な推移がわかった。資料は昭和44年から始まるデータを記載し、5年ごとの白血病死亡率をまとめたもの。対10万人数の白血病死亡率は、玄海原発稼働前と後とでは6から7倍に増加しているという驚愕の数値が並ぶ。また原発周辺自治体も同様に、昭和50年の玄海原発1号機の稼働開始以降から死亡率増加を示す推移を示している。
各県保健部局が毎年発行している衛生統計年報(人口動態編)を引用した資料によれば、玄海原発1号機が稼働する以前の昭和44年から昭和52年までの期間は、本市における対10万人数の白血病死亡率は約3.6人と、同期間の全国平均3.5人とほぼ同じ数値となっている。
しかし昭和50年に玄海原発1号機が稼働を始め、その6年後の昭和56年に2号機が稼働開始、平成6年に3号機、平成9年に4号機が稼働を開始するに従い、白血病死亡率は増加の一途をたどっている。平成9年から平成23年までの期間は、全国平均5.7人に対して、本市は26.2人にも及ぶ。
玄海原発は白血病を誘発すると言われるトリチウムを放出する。放出量は全国にある他原発の中で最も多く、稼働開始から現在に至るまで大気中や海洋中に放出され続けている。トリチウムは放射能を含んでいると言われ、全ての原発や核燃料再処理施設では回収されず、自然環境に垂れ流しの状況から、世界中でも深刻な問題となっている。
本市は玄海原発の対岸にあり、島の周囲は海で囲まれているため、海洋に流されたトリチウムを周囲の海洋生物を介して、住民が食事などで摂取している可能性は高い。
一方で県北部の白血病率の高さは、ウイルス性による風土病とされている。特に長崎県はウイルスキャリアが多いことから、玄海原発1号機稼働開始前から発症の割合は全国平均よりも高い。昭和44年から49年の全国平均3.5人に対し、本市は3.9人とわずかな差であり、他の県北部自治体も同様の数値だ。しかし平成9年以降は全国平均から6倍近い明らかな差が生じている。
市防災士会の辻会長は「資料にまとめたデータは、各自治体が公表したもので改ざんする必要がない。相関関係の無視は許されない」と厳しい口調で語った。また「玄海原発の原子炉冷却海水は毎秒70㌧も壱岐水道に放出され、海水温度上昇により漁業にも影響がある」とし「市は九電に明確な調査と対応を要求すべき」と述べた。
将来の子ども達のために調査を ( 2019.2.26 壱岐新報)
高い白血病死亡率、玄海原発の影響か(2019.2.20 壱岐新報)
身体への影響は皆無なのか(2019.2.20 壱岐新報) より抜粋
玄海原発と白血病に関する研究を進めている、元純真短期大学講師で医学博士の森永徹氏の研究資料とシンポジウムでの発表は興味深い。内容には、玄海原発30㌔圏内を有する本市にとって、聞き流すことができない重要な情報が含まれている。
これまで唐津市などの原発周辺では、玄海原発の稼働差し止めを求める訴訟が起き、原告側は差し止めを求める理由の一つとして玄海町とその周辺での白血病による死亡の増加を挙げている。対して九電側は白血病の増加は高齢化によるものであると反論し、他にもその地域で昔から風土病といわれる成人T細胞白血病を原因とする意見をあげている。またこの風土病は西日本に多いことも理由にする。一方で森永氏は、成人T細胞白血病、すなわち風土病について、科学的に検討したものは一つも見当たらないとして独自に検討を進めてきた。
玄海原発からの距離と白血病死亡率の変化で、佐賀県内20自治体ごとの原発稼働前(昭和44年~昭和51年)と稼働後(平成13年~平成24年)の年平均白血病死亡率(人口10万対)と、玄海原発から各自治体までの距離の関連を調べた結果、玄海原発に4・1㌔近づく毎に10万人当たり1人、白血病死亡率が増加するというものとなった。また、昭和50年の稼動前と後との比較では、4倍以上の増加率になっている。
また放射性物質の放出になるトリチウム(放射性水素)は、体内に入ると白血病を誘発するとされる。玄海原発は全原発の中で最もトリチウムの放出量が多く、全国1位だ。
トリチウムは自然界にも存在し、新陳代謝で体外排出されるといわれている。しかしタンパク質や脂肪に取り込まれた有機物結合型トリチウムは排出までに長い年月がかかる。さらに海に放出された水から、魚介類などを介して生物濃縮され、食物連鎖で私たちの体内に入るようになる。いわば内部被曝のようになる。この流れから白血病を誘発している可能性は否定できない。
森永氏は、「玄海原発が全国一トリチウムの放出量が多いこと、トリチウムは原発周辺の海水、大気、水産物を汚染すること、動物実験ではトリチウムは白血病を誘発する傾向があること、同じ原発立地自治体でもトリチウム高放出と低放出原発立地自治体の住民の間には、白血病死亡率に統計学的有意差がある」ことから、玄海原発周辺の白血病の多発の要因は、玄海原発から放出されるトリチウム以外には考えられないと示唆している。
玄海原発と白血病
森永 徹(元純真短期大学・健康科学)
玄海原発と白血病 福岡核問題研究会 2015年3月7日 九州大学 スライドより抜粋
元原発技術者が「放射性トリチウム汚染水を薄めて海洋放出する」方針を批判
(2018.09.02 ハーバービジネスオンライン)より抜粋
「置き場がなく、海洋放出しかない」と急ぐ政府
「薄めて基準値以下にすれば海洋放出できる」と原子力規制委員会
トリチウム汚染水の海洋放出に異を唱える、元原発技術者の後藤政志さん 東京電力福島第1原発でたまり続けている放射性トリチウムなどを含んだ大量の汚染水。原子力規制委員会は、この汚染水を「海洋放出が唯一の選択肢」として、年内放出への決断を迫っている。
8月30日に開催された福島県富岡町の公聴会では、漁業関係者を中心に「福島県の漁業に壊滅的な打撃を与える」などと海洋放出に反対する声が相次いだ。
その公聴会の前日に行われた緊急学習会では、元東芝・原発技術者の後藤政志氏が「トリチウム汚染水を大型タンクに100年以上備蓄し、線量が減衰するまで保管する方法が現実的だ」と訴えた。人や環境に対する危険性についてさなざまな見解があるが、必ずしも安全が確認できていないのがトリチウムという放射性物質だ。
しかしこの大型タンク案に対し、東京電力は「汚染水を貯蔵する敷地が足りなくなる」とも主張、検討するにも至っていない。
「基準値以下」のトリチウム水を流す米国イリノイ州では、原発周辺に暮らす住民の脳腫瘍や白血病が30%以上増え、小児がんは約2倍に増えたとの報告がある。それでも経済産業省は「トリチウムは人体への影響がセシウムの700分の1で、海外でも放出しており安全」だとし、原子力規制員会は「薄めて告示濃度以下にすれば放出できる」という立場をとっている。
「置き場がなく、海洋放出しかない」と急ぐ政府
後藤氏は、この見解について異を唱える。 「トリチウムの安全性はまだ確認できていません。光合成によって有機結合型トリチウムになるとさらに危険性が高まります。さらに放射性物質による汚染から海洋環境を守るとした『ロンドン条約』違反でもあります。
いくら薄めた(基準値以下にした)としても、日常的に放出される分に加えて備蓄された1000兆ベクレルが海へ投棄されるとなると、総量の問題も出てきます。
そのため放射線量が1000分の1に減衰する123年間、大型タンクに保管しておくのが妥当。その大型タンクの技術はすでにある。2021年までの133万トンは、原発敷地のスペースで全て保管することも可能です」(後藤氏)
後藤氏はもともと海底石油開発などの特殊船舶・海洋構造物の設計技師で、石油備蓄タンクの実例をもとに検討した。 「足りなければ、7号機8号機建設予定地もある。洋上タンク方式をとれば133万トンの容量は大した量ではない。確かに予算的には海洋放出が34億円と最も安価ですが、他の地下埋設2500億円といった経産省案と比べると、大型タンク案は330億円と妥当な額です。これを無視して海洋放出するなどあり得ない」(後藤氏)
漁業関係者が海洋放出に反対、漁業に対する風評被害が広がることは避けられない。そんな状況で「薄めさえすれば流せる」と、これ以上のトリチウム汚染水を海洋放出させてよいものだろうか?
経産省が放出をもくろむ福島原発トリチウム水の危険性
(2018/10/01 女性自身)より抜粋
放射線治療の第一人者で、北海道がんセンター・名誉院長の西尾正道医師は、こうした政府の安全神話に警鐘を鳴らす一人だ。
「トリチウムは体内でたんぱく質や脂質などの有機物と結合し、有機トリチウムになると細胞の核に取り込まれDNAを損傷。健康被害が生じる可能性があります。カナダでは、トリチウムを大量に放出するピッカリング原発の周辺で、小児白血病やダウン症候群などの増加が実証されています」
<参考資料>日本の発電用原子炉トリチウム放出量
2002年~2012年度実績(2015.3.27 inaco)より抜粋
原子力施設運転管理年報24年度版・25年度版に掲載されている日本の商業用原子炉(実験炉・原型炉を含む)から放出されている液体の形でのトリチウム放出量である。各事業者が計測した数字をそのまま掲載したものだが、加圧水型原子炉の放出量には驚かされる。
特に九州電力玄海原発の放出量は、カナダの重水炉CANDU型原子炉の放出量に匹敵する。これで付近住民に健康被害が出ていないと考える方がおかしい。
『トリチウムの健康被害について』
( 2018年12月11日 市民のためのがん治療の会)より抜粋
トリチウムの人体影響
最も有名な報告はドイツとカナダからの報告です。ドイツでは1992年と1998年の2度行われたKiKK調査が有名です。この調査はドイツの原子力発電所周辺のがんと白血病の増加に関する調査です。 その結果は、原子力施設周辺5km以内の5歳以下の子供には明らかに影響があり、白血病の相対危険度が5km以遠に比べて2.19、ほかの固形がん発病の相対危険度は1.61と報告され、原発からの距離が遠くなると発病率は下がったという結果です。
カナダの重水炉というトリチウムを多く出すタイプのCANDU原子炉では稼働後しばらくして住民が実感として健康被害が随分増えていると騒ぎ出しました。 調査した結果やはり健康被害が増加していました。 カナダ・ピッカリング重水原子炉周辺都市では小児白血病や新生児死亡率が増加し、またダウン症候群が80%も増加していました。
さらにイギリスのセラフィールド再処理工場の周辺地域の子供たちの小児白血病の増加に関して、サザンプトン大学のガードナー教授は原因核種としてトリチウムとプルトニウムが関与していると報告しています。
日本国内でも同様な報告があり、全国一トリチウムの放出量が多い玄海原発での調査・研究により、森永徹氏は玄海原発の稼働後に玄海町と唐津市での白血病の有意な増加を報告しています。 同じ原発立地自治体でもトリチウム高放出の加圧水型原子炉と低放出の沸騰水型原子炉の原発立地自治体の住民の間には白血病死亡率に統計学的有意差があることなどから、 玄海町における白血病死亡率の上昇は玄海原発から放出されるトリチウムの関与が強く示唆されるのです。
北海道の泊原発周辺でも稼働後にがん死亡率の増加が観察されています。 泊村と隣町の岩内町のがん死亡率は泊原発が稼働する前は道内180市町村の中で22番目と72番目でしたが、原発稼働後は道内で一位が泊村、二位が岩内町になりました。
なおマウスの実験では、トリチウムの単回投与より同じ量の分割投与の方が白血病の発症が大幅に高かったとする報告もあるが、原発周辺住民のトリチウム被曝は持続的であり、まさに分割投与です。 さらに原発からの距離が近いほど大気中のトリチウム濃度が高いことも分かっています。色々な報告で小児白血病が多いことが共通していますが、小児の白血病の多くは急性リンパ性白血病です。 放射線が白血球の中で最も放射線感受性の高いリンパ球に影響を与え、リンパ性白血病を発症させてもおかしくないのです。
こうしたトリチウムの危険性を知っている小柴昌俊氏(ノーベル物理学者)と長谷川晃氏(マックスウエル賞受賞者)は連名で、 2003年3月10日付で「良識ある専門知識を持つ物理学者として、トリチウムを燃料とする核融合は極めて危険で、中止してほしい」と当時の総理大臣小泉純一郎宛てに『嘆願書』を出しています。
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