全国で増える「甲状腺の悪性腫瘍」患者

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サンデー毎日2017.2.26 全国で増える「甲状腺悪性腫瘍」患者

311甲状腺がんの戦慄シナリオ 

全国で増える「甲状腺の悪性腫瘍」患者

集中連載 フクシマ・カタストロフ 作家・ジャーナリスト青沼陽一郎

2017.2.26 サンデー毎日)より抜粋

 

 2011年3月11日に発生した福島第1原発事故から間もなく年。

 子どもたちの甲状腺がんが、着実に増えている。

 昨年9月末までに福島県で実施された甲状腺検査の結果、「悪性もしくは悪性の疑い」のがんと診断された子どもが、184人だった。このうち146人が手術を受けて、1人が良性であったが、残りの145人は全員ががんだった。昨年12月27日に開かれた第25回「県民健康調査」検討委員会で明らかになった。

 

 福島県では、6年前の東京電力福島第1原子力発電所の事故直後から、「県民健康調査」の一環として、発生当時18歳以下だった子どもたちの甲状腺の検査を実施してきた。チェルノブイリ原子力発電所の爆発事故後に、小児甲状腺がんが多発した教訓を踏まえてのことだ。対象となるのは約38万人で、既に2回の検査が終了している。

 

 深刻なのは、その2回目でがんが見つかったことだ。

 最初の1巡目検査は、2013年度(14年3月末)までに終了している。がんの増減を調べようにも、比較対象n基本となるデータがなかったことから、これを「先行検査」とした。

 ところが、この時点で、「悪性ないし悪性の疑い」のがんと診断された子どもたちが、116人いたのだ。このうち、切除手術を受けたのは102人。ここで1人が良性と診断され、あとの101人が甲状腺がんであることが認められた。

 その直後から始まった「本格検査」としての2巡目の検査が15年度末(16年3月末)までに終了。その結果、「悪性ないし悪性の疑い」のがんとされた子どもが、新たに68人も見つかった。このうち44人が手術を受け、全員ががんであることが確認された。1巡目検査のあとに、それだけの甲状腺がんが発症したことになる。

 日本では年間100万人に1、2人が甲状腺がんを発症するとされている。

 実際に福島県で2巡目検査を受けたのは、27万454人。「疑い」も含めると、年間3977人に1人の割合で発症していることになる。これは異常な数値だ。

 だが、検討委員会では、いつも「放射線の影響とは考えにくい」としている。そもそも、これだけの甲状腺がんが見つかる理由に、スクリーニング効果(2:それまで実施されなかった集団に一斉に検査をすること、もしくはより高性能な検査機器を用いることで、それまで見つからなかった異常が過度に発見されること)を挙げていた。いまだかつて、これだけの規模の、しかも高性能の検査機器によるスクリーニング検査はなかった。だから“見つかる”というより、“見つけてしまっている”というのだ。その上で、手術の必要のないがんまで、過剰に「がん」と診断して、切除してしまっている「過剰診断」ではないか、という指摘まであった。

 

福島県外でも「基金」療養費支給

しかし、最初の検査ならともかく、2巡目の検査で68人(手術44人)にがんが見つかっているのだから、スクリーニング効果という言い訳は成り立たない。

 また、恐ろしいのはがんの転移だ。チェルノブイリでは、甲状腺がんが見つかると6人に1人の割合で肺に転移が見つかっている。

 15年8月31日の第20回「県民健康調査」検討委員会には、福島県立医科大学附属病院の鈴木眞一甲状腺・内分泌外科部長による「手術の適応症例について」という文書が提出されている。この中で、同病院が外科手術を施行した小児甲状腺がん96例(32015331日時点)のうち92%に、「リンパ節転移」「甲状腺外浸潤」「遠隔転移」が確認されたことが報告された。いずれは症状が表れるもので、過剰診断などというものではないことは明らかだった。

 やはり、小児甲状腺がんが異常多発しているとしか言いようがない。

 だが、これは福島県だけに限ったことなのだろうか。事故直後に舞い上がった放射性物質のプルーム()は、県境を越えて各地に広がっていった。事故直後に東京の浄水場や、静岡の茶葉から放射性物質が検出されていることがその証左だ。仮に、福島の甲状腺がん多発が原発事故由来だとすると、他都県でも同様の傾向が見られるはずだ。

 興味深い数値がある。

 昨秋「311甲状腺がん子ども基金」というNPO法人が発足した。この組織は、福島第1原発事故以降に甲状腺がんの手術を受けた人、および検査によって甲状腺がん、またその疑いと診断された25歳以下で、福島以外にも、岩手、宮城、山形、新潟、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、静岡、山梨、長野の各都県に在住していた人を対象に、一律10万円を給付するものだ。この申請と給付が昨年12月から始まり、先月には2回目の給付が実施された。

 同基金のサイトには、給付された対象者の居住地域と人数が参考資料として公開されている。それが上に転載した表だ。これを見ると、福島県外の対象者が12人いることになる。

 同基金に確認したところ、これは当地でもともと生活していた人たちで、全員が原発事故後に違和感や症状を訴えて受診し、甲状腺がんと診断され、既に手術を受けているという。

 

 福島では4人が県民健康調査以外で見つかっている事実も見逃せない。「1巡目と巡目の間や、その後に発症したから、検査で見つからなかった可能性が高い」(福島県の医療関係者)

 ただし、この給付申請は始まったばかりであり、蓄積されたデータが少ない。福島県以外に周知が行き届いているとも言いがたい。これから、他都県の給付申請が増える可能性もある。注目するだけの価値はある。

 他方で、原発事故による甲状腺がんの増加は子どもに限ったことではない。チェルノブイリでは、大人の甲状腺がんの増加も深刻である。

 では、福島ではどうか。実は、大人も含めて甲状腺がんが増えているのだ。

 その傾向を示す数値が一般人でも確認できる。それが「包括医療費支払い制度(DPC)」の導入状況と実績をまとめたデータだ。

 

 

厚労省データに見る「危険な兆候」

 DPCは、過剰診療の防止や入院医療費のばらつきを抑える目的で導入された定額支払制度で、特定の疾患ごとに処置内容や負担額が決まる。日本では03年から実施され、全国の大病院はほとんどこの対象病院となっている。厚生労働省のサイトをのぞくと、このDPCによって、どの疾患でどこの病院がどれだけの手術や処置を行ったか、その患者数が年度ごとに分かるデータが14年度まで公表されている。そこには「甲状腺の悪性腫瘍」という疾病欄があり、手術を行った患者、あるいは手術をしなかった患者、それぞれの数値が病院別でわかる。つまり、この数値を合計すると、その病院の患者数が算出できる。

 そこで福島県立医大の数値を調べると、東日本大震災が発生する前年の10年度には、26人であった甲状腺悪性腫瘍の患者数が、翌11年度にはその2倍の52人に増え、12年度には46人、13年度66人、14年度87人と増加の傾向を示している。

 では福島県外ではどうか。福島県近隣や各地の病院を調べてみた。

 栃木県にある自治医科大附属病院では、震災の前年に33人だった患者が、翌年には57人に増え、50人、67人、82人と、やはり総じて増加している。茨城県の筑波大附属病院でも、増加傾向にある。

 この傾向は各地で見受けられる。震災発生が3月11日の年度末ということもあってわかりやすいが、震災前年度と翌年度では急速に増加している。東京大医学部附属病院では、1.5倍に跳ね上がっている。一方で、九州、沖縄の病院を見るとこちらは震災前と変わらないレベルで推移している。それ以外の地域では増加傾向にある。

 そこで、次にDPCデータにある全国の病院の患者数を合算してみた。ただし、患者が10人未満の場合は、患者の特定を避けるために数値を未公表にしていることから、これが正確な全国の患者数とは言えない。

 「それでも、合計すれば年度ごとの傾向はわかるはずです」(厚労省保険医療課包括医療推進係)

 その数値が表の末尾にあるものだ。あくまで一般にアクセスが可能な参考の数値だが、震災前年度に約1万1000人だった甲状腺悪性腫瘍の患者数は、翌年には急増し、震災4年後には1万7000人に達しようとしている。

 これは受診をして初めて甲状腺がんと診断された人の数であり、大規模検査によるスクリーニング効果などといえるものではない。全国的に老若男女を問わず増えているのだ。

 福島県は小児甲状腺がんの増加と原発事故の因果関係を認めていない。だが、放射線の影響で甲状腺がんが増加することは「医者の教科書にも書いてある」(専門医)ことで、まず疑われる原因だ。

 これは危険な兆候ではないのか。

厚労省データに見る「危険な兆候」

 DPCは、過剰診療の防止や入院医療費のばらつきを抑える目的で導入された定額支払制度で、特定の疾患ごとに処置内容や負担額が決まる。日本では03年から実施され、全国の大病院はほとんどこの対象病院となっている。厚生労働省のサイトをのぞくと、このDPCによって、どの疾患でどこの病院がどれだけの手術や処置を行ったか、その患者数が年度ごとに分かるデータが14年度まで公表されている。そこには「甲状腺の悪性腫瘍」という疾病欄があり、手術を行った患者、あるいは手術をしなかった患者、それぞれの数値が病院別でわかる。つまり、この数値を合計すると、その病院の患者数が算出できる。

 

 そこで福島県立医大の数値を調べると、東日本大震災が発生する前年の10年度には、26人であった甲状腺悪性腫瘍の患者数が、翌11年度にはその2倍の52人に増え、12年度には46人、13年度66人、14年度87人と増加の傾向を示している。

 

 では福島県外ではどうか。福島県近隣や各地の病院を調べてみた。

 栃木県にある自治医科大附属病院では、震災の前年に33人だった患者が、翌年には57人に増え、50人、67人、82人と、やはり総じて増加している。茨城県の筑波大附属病院でも、増加傾向にある。

 

 この傾向は各地で見受けられる。震災発生が3月11日の年度末ということもあってわかりやすいが、震災前年度と翌年度では急速に増加している。東京大医学部附属病院では、1.5倍に跳ね上がっている。一方で、九州、沖縄の病院を見るとこちらは震災前と変わらないレベルで推移している。それ以外の地域では増加傾向にある。

 

 そこで、次にDPCデータにある全国の病院の患者数を合算してみた。ただし、患者が10人未満の場合は、患者の特定を避けるために数値を未公表にしていることから、これが正確な全国の患者数とは言えない。

 

 「それでも、合計すれば年度ごとの傾向はわかるはずです」(厚労省保険医療課包括医療推進係)

 

 その数値が表の末尾にあるものだ。あくまで一般にアクセスが可能な参考の数値だが、震災前年度に約1万1000人だった甲状腺悪性腫瘍の患者数は、翌年には急増し、震災4年後には1万7000人に達しようとしている。

 

 これは受診をして初めて甲状腺がんと診断された人の数であり、大規模検査によるスクリーニング効果などといえるものではない。全国的に老若男女を問わず増えているのだ。

 

 福島県は小児甲状腺がんの増加と原発事故の因果関係を認めていない。だが、放射線の影響で甲状腺がんが増加することは「医者の教科書にもにも書いてある」(専門医)ことで、まず疑われる原因だ。

 

 これは危険な兆候ではないのか。

 福島県では「放射線の影響とは考えづらい」という見解をずっと貫いているが、原発事故由来でないのなら、その原因はなにか。この異常事態を解決することが最優先ではないか。

 甲状腺がんの多発は否定しようがない。しかも、全国的に増加傾向が見られることも事実なのだ。

 

***** サンデー毎日の記事の転載はここまで ****

甲状腺がん・福島県外で重症化〜基金が初の療養費給付

 (2016年12月26日 ourplanet ) 

 

東京電力福島第一原子力発電所事故後、甲状腺がんと診断された子どもたちを支援している市民団体「3・11甲状腺がん子ども基金」が、26日から療養費の給付を開始した。初の給付を受けたのは35人で、そのうち3人がRI治療(アイソトープ治療)の必要のある重症患者だった。

 

県外に重症患者が多い傾向

35人の内訳は、福島県26人のほか、神奈川県3人、宮城県、群馬県、千葉県、埼玉県、長野県、新潟県が各1人。年齢は現在10歳から25歳までで、男性14人に対し、女性は21人。すでに手術を終えていたり、手術が決定している患者について分析したところ、福島県内の患者は8割が半摘だったが、福島県外では、がんが進行してから見つかっている患者が多く、8割が全摘だった。またリンパ節転移についても、県外では90%近くに転移があったという。

 

さらに、このうち男性2人と女性1人の計3人が、10万円の追加給付(計20万円)を受けるRI治療(アイソトープ治療)の適応患者だった。RI療法は、肺転移している場合の治療法で、具体的には、高濃度の放射性ヨウ素を内服し、遠隔転移している甲状腺がんを内部被曝させて破壊するというもの。医療従事者や家族などへの被ばくを防ぐために、厳格な遮蔽設備が必要となり、日本では現在、治療を受けられるベッドが全国135床しかない。

 

県民健康調査以外で診断も3人

福島県は、事故当時18歳以下だった県民を対象に甲状腺検査を実施し、これまでに175人以上ががんまたはがんの疑いと診断されている。しかし、今回、この検査では見逃され、自覚症状などによって、個別に健診し、甲状腺がんと診断された患者が3人いた。

 

同基金の崎山比早子代表理事は、「今、福島県では検診縮小が検討されようとしているが、実態に逆行している。福島県内では半摘で済んでいる患者が多く、検診によって早期発見早期治療が実現していることが大切だ」と述べた。

 

 

 

県外で4割が重症例〜甲状腺がん子ども基金給付53人

投稿者: ourplanet 投稿日時: 火, 01/31/2017 – 02:29

東京電力福島第一原発事故後に甲状腺がんを発症した子どもたちに経済支援を行っている「3・11甲状腺がん子ども基金」は31日、新たに18人の患者に療養費を給付した。

給付を行ったのは、原発事故時年齢6〜18歳の子どもたちで、福島県15人、埼玉県、東京都、神奈川県各1人。そのうち、放射性ヨウ素を内服する必要のあるアイソトープ(RI)療法の摘要患者は4人で、福島県内が2人、福島県外が2人だった。これらの患者は10万円の追加給付を受ける。

1回目と2回目を合計した支給者数は53人となり、福島県内が41人、福島県外が12人(神奈川県が4人、埼玉県2人、宮城県、群馬県、東京都、千葉県、新潟県、長野県が各1人)。また、RI治療適用者の合計は、福島県内が2人、福島県外が5人の計7人で、福島県外では給付対象者の約4割にあたる5人が遠隔転移などにより、アイソトープ治療を必要としていることが分かった。福島県外では甲状腺検査が行われていないため、自覚症状によってがんが見つかるケースが多く、見つかった時にはすでに重症化している可能性がある。

今回の支給対象者のうち、福島県の患者の中には、県民健康調査以外でがんが発見されたケースが1例あった。前回と併せると4例となる。また3人の患者が、手術後に再発し、うち1人がRI治療に入っていることが分かった。なお、男女の割合は、男性が11人、女性7人で男性患者からの申請が多かった。

【関連動画】
甲状腺がん・福島県外で重症化〜基金が初の療養費給付(2016年12月27日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2084
小児甲状腺がん患者に療養費〜市民団体(2016年11月28日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2071
「3・11 甲状腺がん子ども基金」設立記者会見(2016年9月9日)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2058

3・11甲状腺がん子ども基金
http://www.311kikin.org

 

*****記事の転載はここまで*****

 

ほうきネットからの補足コメント

チェルノブイリ原発事故のときと同様に「がんの進行が早い子どもの甲状腺がん」は、スクリーニング検査(一斉検診)が行なわれずに、自覚症状が出てきて検査を受けた場合、がんが進行していることが多くなります。「3・11甲状腺がん子ども基金」の報告では、甲状腺を全部摘出しなければならない子どもが8割にもなっていますが、全摘すると、一生ホルモン剤を飲み続けなければなりません。それ以上に心配なのは、肺などへの転移の比率が高くなることです。

 

スクリーニング検査で早くがんが見つかれば、甲状腺の摘出が半分で済む人が多く、転移も少なくなります。チェルノブイリでは年2回ほど検査してきましたが、日本では「20歳まで2年に1回」であり(空白期間に発症している例も出てきています)それ以降は「5年に1回実施予定」としています。しかも福島県以外では、こうした公的な検診をほどんど行なっていません。少なくとも年間1ミリシーベルト以上被ばくする汚染地では、福島県外も含めて毎年検診する必要があります。

 

日本の健康被害の状況は、チェルノブイリにだんだん似てきています。

日本政府は、国連人権理事会の勧告を真摯に受け止め、国民の命と健康を守る義務があります。

 

国連人権理事会 「日本では福島原発事故後『健康を享受する権利』が侵害されている」

 

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