福島・県民健康調査 新たに7人が甲状腺がん 計152人
東京電力福島第1原発事故の影響を調べる福島県の「県民健康調査」検討委員会は5日福島市内であり、3月末までに新たに7人が甲状腺がんと診断されたことが明らかになった。2014年度から実施した2巡目の検査で5人、16年度からの3巡目で2人が加わり、がんの確定は1~3巡目で計152人となった。
県は、原発事故時に18歳以下だった全ての子どもを対象に甲状腺検査を実施。11年度から1巡目を実施している。検討委では、放射線の影響についての議論はなく、星北斗座長(福島県医師会副会長)は「事故の影響は考えにくい、というこれまでの考えは変わっていない」と説明した。
甲状腺検査で経過観察になった人が、その後、医療機関で甲状腺がんを見つけても県が把握できず、「がん患者」の数に反映されない仕組みになっている問題も議題に上がった。星座長は「可能な限り把握する方法がないか、継続的に議論したい」との見解を示した。【尾崎修二】
甲状腺がん190人〜公表データ以外の把握、検討へ
記者会見(データに含まれていない症例把握について活発に質問が飛んだ)
東京電力福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の検討委員会が5日、開催され、事故当時18歳以下だった福島県民38万人に実施している甲状腺検査の新たなデータが公表された。それによると、2巡目の検査で、悪性または悪性疑いと診断された子どもは、前回の69人より2人増え71人となった。また3巡目の結果も公表され、4人が悪性または悪性疑いと診断された。1巡目から3巡目をあわせた数は、甲状腺がんの悪性または悪性疑いが191人。手術を終えた人は7人増え、1人をのぞく152人が甲状腺がんと確定した。
資料はこちら。
「経過観察」の症例把握の方法を検討へ
福島県の甲状腺検査をめぐっては、2次検査の時点ですぐに穿刺細胞診を実施せず、「経過観察」となった子どもが、その後、甲状腺がんと診断された場合、検討委員会へ公表しているデータには含まれないことが、今年3月に発覚。県の担当者は会議の中で、「検査後の経過観察の中でがんが判明した場合などは追跡が困難であり、個人の情報の問題もあり、報告していなかった」と説明した。
これに対して委員からは批判が殺到。甲状腺専門医の清水一雄委員は、「根拠のあるデータに基づいて検討しなければ、この検討委員会の議論は空論になる。事実がわからなければ、何のために検査をしているかわからない」と指摘。また、国立がん研究センターの津金昌一郎委員も「公表されていない症例を除外したデータでは、国際的な論文は書けないと思う。当然、それらのデータは共有していただきたい」と述べた。また環境省の梅田珠実環境保健部長も、「保健診療に移行すると、別ルートとして扱われるというのは由々しき事態。この検査の信頼性に関わる。現在、実施しているサポート事業には、基礎資料として把握するという目的もあり、把握する努力をすべきだ」と提案。他の委員からも、「個人情報に配慮しながらできるかぎり把握すべきだ」との意見が相次いだ。
星北斗座長は、「できるだけ早期に、枠組そのものを見直すべきかもしれない。全国に散らばる患者を追いかけるのかなどが、今後の検討課題だ」とした上で、現在のデータからこぼれている症例の把握や報告方法について検討する方針を示した。
サポート事業に報告症例外が3例
検討委員会ではじめて、「甲状腺検査サポート事業」の実施状況についても報告があった。福島県民健康調査で2次検査となった、主に18歳以上の患者の医療費を助成する事業で、2015年7月に開始している。報告によると、医療費の助成を受けたのは、2015年度で延べ121件、2016年度で延べ104件の計225件で、交付人数は192人。そのうち、甲状腺がんの手術費用の助成を受けたのは62人だった。また、そのうち3人が、検討委員会でデータが公表されない「経過観察」後にがんが見つかった患者であることも報告された。
第 27 回「県民健康調査」検討委員会(後半=甲状腺がんに関する討議)
市町村別のデータ公表見合わせ
今回初めて、公表された3巡目の甲状腺検査結果。この結果の公表方法が、これまでと大きく変わった。これまで市町村単位で公表されていた結果報告を変え、避難指示が出るなどした13市町村、中通り、浜通り、会津地方の4つの地域に分けて、人数を公表したのである。
甲状腺検査を担当している福島県立医大の大津留晶教授は、「レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドラインでは、人口2000人以下の市町村別によるデータの開示をしないこととされている」などと変更の理由を説明したが、福島大の清水修二委員が「相当、重要な変更だ」と反発。「これまで通り市町村別の数字を追跡する必要があるのではないか」との見方を示した。また、山梨大学の加藤亮平委員は「4つの地域に分けた理由は何か。」などと質問。これに対し。大津留教授は、4つの地域分けが、行政単位の実務的なものであると認めた。また、国立保健医療科学院の﨔田尚樹委員は、「検討のデザインや追跡方法をあらかじめ決めておかないと恣意的になる」と批判。さらに広島大学の稲葉俊哉委員も、地域分けが大きすぎるのではないかと指摘し、「具合いの悪いデータを隠しているのではないか疑われる恐れがある」と懸念を表明した。最後に、清水委員が再び発言し「私が心配しているのは、この県民健康調査の信頼性を下げること。それは避けたい。非常に重要なことなのに、急に変更するというのは、この調査の信用性を低下させる」と警鐘を鳴らした。星座長は、これらの意見を受け、発表方法について引き続き議論するとした。
IARC内で福島の甲状腺検査結果を検討
甲状腺検査の評価をめぐり、星座長が12月の検討委員会で提案した中立的、国際的、科学的な「第三者機関」については、県や国が直接、設置することは見送り、国際がん研究機関(IARC)が検討を行うことを、県民健康調査課の鈴木陽一課長が報告した。環境省の梅田環境保健局長によると、検討のメンバーは、加盟国から委員で構成され、無症状の甲状腺がんをスクリーニングすることの是非など、被曝後における甲状腺モニタリングの方向性を議論するという。検討内容は翻訳され、福島県に報告される予定。検討の結果、甲状腺検査の不利益が強調されれば、甲状腺検査は縮小ないし中止となる可能性もある。IARCは、国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の外部専門機関。福島県立医大の山下俊一副学長が昨年、同機関で、福島県の甲状腺検査について講演を行っている。
委員は改選へ
今回で、検討委員会と甲状腺評価部会は任期切れとなる。放射線や甲状腺、疫学など、各分野の機関から推薦を受け、次回以降の委員を選定することが公表された。甲状腺評価部会の部会長を務める清水一雄委員は「バランスの良い構成にして欲しい。甲状腺の臨床医を増やす必要がある」と提案。また、津金委員からは「生命倫理の専門家や法律家」、﨔田委員からは「患者の代表」を委員に含めるよう、それぞれ提案された。
第 27 回「県民健康調査」検討委員会(前半)
甲状腺がんの結果は以下のとおり
福島県の甲状腺がん地図の今→190人の子ども達が発病
(2017年6月6日 福島原発事故の真実と放射能健康被害)
2017年6月5日に公表された最新の福島県民調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、3か月半前…前回の184人から6人増えて合計190人になりました。※1※2
それから手術で良性結節だったことが確定し甲状腺がんではなかった1人も元々は、この甲状腺がん及び疑いにカウントされていましたから、この1人も数えれば甲状腺がん及び疑いは合計191人となります。
福島県の発表は甲状腺がんを、悪性…悪性とはがんのことですが『悪性ないし悪性の疑い』という言葉を使い、あたかも甲状腺がんでない子ども達もこの中に含まれているように書くことで、焦点をぼかしチェルノブイリ原発事故との比較を困難にしています。
しかし手術を終えた153人の中で、良性結節だったのはたった1人にすぎず、150人が乳頭癌、1人が低分化癌、1人がその他の甲状腺癌との診断です。
つまり手術を終えた153人中152人が小児甲状腺癌。
そして『悪性ないし悪性の疑い』のうち99%は、小児甲状腺癌でした。
ですので疑いという言葉を過大評価して安心するのは危険です。
◆目次
【1】先行検査と本格検査
【2】市町村別で比較←★比較地図あり!
【3】事故経過年別で比較
【4】男女別で比較
【5】年齢別で比較
【1】先行検査と本格検査は、先行検査と本格検査の定義を理解していただければ充分です。
【2】~【5】は、福島の甲状腺がんと考えられる190人を市町村別、事故から病気発見までの経過年数別、男女別、事故当時の年齢別にそれぞれ分類して、チェルノブイリ原発事故や過去の日本や福島県のデータと比較しています。
なお、この記事は2014年3月14日に私が当サイトにて発表した論文【緊急】小児甲状腺がん急増?福島県の新事実→2008年患者数0人!に最新データを反映させた第13回目の改訂版です。
福島県立医科大学が甲状腺がんの子供達のデーターの一部を事実上…隠ぺいしていた件については福島医大が小児甲状腺がんを事実上隠ぺい→隠蔽された子供は6人もをご覧下さい。
福島県いわき市の南側にある…茨城県北茨城市で甲状腺がんの子供達が3人見つかった件については茨城県北茨城市の子供達3人→甲状腺がん!北関東と福島県との比較をご覧下さい。
福島県相馬市の北側にある…宮城県丸森町で甲状腺がん及び疑いの子供達が2人見つかった件については【緊急特集】宮城県丸森町で子供2人が甲状腺がん→福島県と比較するをご覧下さい。
【1】先行検査と本格検査
まず先行検査と本格検査の定義を押さえておきましょう。そうでないと福島県の子供達に今…何が起こっているのか?正確には理解できません。
と、言うのは全国紙を発行する新聞社やテレビ局の報道の多くは本格検査が始まってからというもの…先行検査で新たに甲状腺がんと確定した人数や、先行検査で見つかった甲状腺がん患者合計数をきれいさっぱり割愛して報道しているからです。
真実を知るために先行検査と本格検査の定義を押さえましょう。
先行検査は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた『18歳以下だった子供達』約36万人を対象に2011年度、2012年度、2013年度の3年をかけ実施されました。最初の検査ですから『一巡目』や『一回目』の検査と表現される場合もあります。
この先行検査の目的は、定説であるチェルノブイリ原発事故の小児甲状腺がんの増加は最短4、5年を前提とし、原発事故によって小児甲状腺がんが増える前の1年~3年の段階でどれだけ福島県内に小児甲状腺がんの子供達がいるか?調査することを目的としていました。
本格検査は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた『18歳以下だった子供達』に加え原発事故後の約1年間の間に福島県内で生まれた子供達も対象となるので検査対象者は約38万人に増えます。2014年度、2015年度の2年をかけて福島県で実施されます。2回目の検査ですから『二巡目』や『二回目』の検査と表現される場合もあります。
この本格検査の目的は、定説であるチェルノブイリ原発事故の小児甲状腺がんの増加は最短4、5年を前提とし、原発事故によって小児甲状腺がんが増える可能性がある4年後に、福島県の子供達に実際に甲状腺がんが増えるか?調査することを目的としています。
先行検査 | 本格検査 | ||||||
実施年度 | 2011~2013年度 | 2014~2015年度 | |||||
検査期間 | 3年で福島県内を一周 | 2年で福島県内を一周 | |||||
対象人数 | 36万7000人 | 38万1000人 |
そして本格検査は、上記と全く同じ要領で3回目の検査は2016~2017年度の2年をかけて福島県で実施され、4回目の検査は2018~2019年度の2年をかけて福島県で実施され、このような要領で…これから先どこまでも続く予定です。
なお当記事では…これから先行検査は1回目の検査ですから、わかりやすいように頭の部分に1を追加して1先行検査と表記します。
本格検査は2回目の検査ですから、わかりやすいように頭の部分に2を追加して2本格検査と表記します。
次の本格検査は3回目の検査ですから、わかりやすいように頭の部分に3を追加して3本格検査と表記します。
1先行検査とは?⇒1回目又は1巡目の検査
2本格検査とは?⇒2回目又は2巡目の検査
3本格検査とは?⇒3回目又は3巡目の検査
先ほど記事の最初のほうで「福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、3か月半前…前回の184人から6人増えて合計190人になりました」と書きましたが、増えた6人の内訳は、2本格検査が+2人、3本格検査が+4人です。今回増えた6人を市町村別に分類した一覧表が下記です。
発病率がわかるよう下記のように色分けしました。
■…1人~999人に1人が発病
■…1000人~1999人に1人が発病
■…2000人~2999人に1人が発病
■…3000人~3999人に1人が発病
■…4000人~6999人に1人が発病
市町村名 | 2016年12月31日→ | 2017年3月31日 | 増加人数 |
いわき市 | 31人→ | 33人 | +2人 |
合計 | +2人 |
市町村名 | 2016年12月31日→ | 2017年3月31日 | 増加人数 |
不明 | 0人→ | 4人 | +4人 |
合計 | +4人 |
奇妙なのは3本格検査です。3本格検査では今回はじめて甲状腺がん及び疑いの子供達4人見つかったわけですが、今まで福島県内の甲状腺がん患者数を59市町村別で発表していたのに、突然4つの地方…具体的には中通り地方、浜通り地方、会津地方の3地方別と避難区域等に4つに分割して発表し市町村別の患者数の発表の廃止を宣言してきたことです。
もちろん、これでは今までできた市町村別の甲状腺がん患者数の比較自体ができなくなってしまいます。
福島医大の大津留晶教授は、福島県の県民調査検討委員会の席上で、市町村別を廃止した理由について人口の少ない市町村は子供も少ないので甲状腺がんの子供が特定される恐れがある、市町村の風評被害を煽るなどともっともらしいことを言っています。※2
しかし福島県の県民調査検討委員会の委員も何名かが異議を唱えているのに、星北斗座長は、時間がもうないことを理由に一任をとりつけ市町村の廃止を検討委員会として認め既成事実化してしまいました。
1先行検査 | 2本格検査 | 3本格検査 | 検査全体 |
115人 | 71人 | 4人 | 190人 |
この小児甲状腺がん検査結果には2つの問題点があります。
まず1つ目の問題点は後から詳しく解説しますが…福島原発事故前まで日本国における小児甲状腺がんは年間100万人に0~3人で推移してきました。しかし今回の福島県の調査では年間100万人に301~401人と従来の100倍を超える小児甲状腺がんが見つかっています。
100万人に0~3人
↓
100万人に301~401人
この小児甲状腺がんの増加…というより多発を単にスクリーニング効果つまり「福島県の子供たち全員を対象に検査したことによって潜在的な甲状腺がん患者がたくさん見つかったからだ」の一言で片づけられるのか?という問題です。
2つ目の問題点は2本格検査と3本格検査で見つかった甲状腺がんと考えられる合計75人中68人の子供達は、数年前に1先行検査を受けた際、甲状腺に「問題があった」ことを示すC判定やB判定ではなく、「問題なし」のA判定された子供達だったということです。※2
判定 | 定義 | 人数 | ||||
C | 甲状腺の状態等から判断して直ちに二次検査を要する場合 | |||||
B | ・5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞を認めた場合 ・甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した場合 |
6人 | ||||
A2 | 5.0mm以下の結節や20.0mm以下ののう胞を認めた場合 | 35人 | ||||
A1 | 結節やのう胞を認めなかった場合 | 33人 | ||||
他 | 先行検査は未受診 | 1人 |
特にA1判定の33人にはそもそも、結節やのう胞自体がなかったはずなのです。つまり先行検査後1~3年で結節やのう胞ができ…新たに甲状腺がんを発病した可能性があるわけです。
もしスクリーニング効果つまり「福島県の子供たち全員を対象に検査したことによって潜在的な甲状腺がん患者がたくさん見つかったからだ」もしそうだったなら同じ子供達を対象にした2回目の検査である本格検査からは、甲状腺がんが見つかる子供たちは劇的に減るはずです。
【2】市町村別で比較
甲状腺がんと考えられる190人の福島県の子供達を市町村別に分類し、その市町村の子供達の何人に1人が発病したか?を色分けしたのが下記の地図となります。
地図の右側の真ん中にある×が福島第一原発です。
■…1人~999人に1人が発病
■…1000人~1999人に1人が発病
■…2000人~2999人に1人が発病
■…3000人~3999人に1人が発病
■…4000人~6999人に1人が発病
この地図を一覧表にしてみましょう。甲状腺癌及びその疑いの子供は何人に1人いるのか?発病した割合が高い市町村順に並べてあります。
市町村名 | 患者数 | 患者は何人に1人いる? |
川内村 | 1人 | 280人に1人 |
只見町 | 1人 | 510人に1人 |
湯川村 | 1人 | 515人に1人 |
大熊町 | 3人 | 657人に1人 |
大玉村 | 2人 | 686人に1人 |
下郷町 | 1人 | 710人に1人 |
浪江町 | 4人 | 812人に1人 |
中島村 | 1人 | 832人に1人 |
本宮市 | 6人 | 872人に1人 |
平田村 | 1人 | 873人に1人 |
川俣町 | 2人 | 1110人に1人 |
泉崎村 | 1人 | 1158人に1人 |
棚倉町 | 2人 | 1160人に1人 |
伊達市 | 9人 | 1178人に1人 |
塙町 | 1人 | 1255人に1人 |
郡山市 | 43人 | 1257人に1人 |
田村市 | 5人 | 1265人に1人 |
二本松市 | 6人 | 1476人に1人 |
いわき市 | 33人 | 1497人に1人 |
白河市 | 7人 | 1544人に1人 |
南相馬市 | 6人 | 1798人に1人 |
西郷村 | 2人 | 1809人に1人 |
桑折町 | 1人 | 1874人に1人 |
会津若松市 | 8人 | 1904人に1人 |
猪苗代町 | 1人 | 1945人に1人 |
喜多方市 | 3人 | 1965人に1人 |
鏡石町 | 1人 | 2029人に1人 |
会津坂下町 | 1人 | 2139人に1人 |
福島市 | 22人 | 2150人に1人 |
石川町 | 1人 | 2162人に1人 |
富岡町 | 1人 | 2301人に1人 |
須賀川市 | 5人 | 2416人に1人 |
矢吹町 | 1人 | 2567人に1人 |
会津美里町 | 1人 | 2609人に1人 |
三春町 | 1人 | 2730人に1人 |
相馬市 | 1人 | 5210人に1人 |
市町村非公開 | 4人 | 不明 |
合計 | 190人 | 1581人に1人 |
川内村は280人に1人、只見町は510人に1人など目を疑いたくなるような数字が並んでいますが、平均すると福島県の子供達の1581人に1人が小児甲状腺がん及び疑いだという事実がはっきりとわかります。
計算式も書いておきます。まず福島原発事故当時、放射性ヨウ素131によって甲状腺を被曝させられた福島県の18歳以下の子供達は合計36万7649人です。この36万7649人は1先行検査の対象でしたが、実際に1先行検査を受けたのは検査対象者の81%にあたる30万0473人だけです。
この1先行検査を受けた30万0473人の中で、1先行検査で甲状腺がんが見つかったのが115人、2本格検査で甲状腺がんが見つかったのが71人、3本格検査で甲状腺がんが見つかったのが4人、全部合計すると190人です。※10
検査受診者30万0473人÷甲状腺がん患者190人=1581人に1人
つまり福島県の子供達の1581人に1名が甲状腺がんだったということです。
(中略)
「(チェルノブイリ原発事故)当時のソ連(現在のウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど)に高性能のエコー診断装置はなかった。1989年か1990年になってアメリカの大富豪などからエコー診断装置の寄贈を受けた」
チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月26日です。
つまりチェルノブイリ原発事故後3年か4年たって初めて高性能のエコー診断装置が導入された。ということはそれ以前、チェルノブイリ原発事故後0~2年または0~3年の間、当時のソ連では高性能のエコー診断装置がない状況で診察がおこなわれてきたということです。そして一覧表では、高性能のエコー診断装置が導入された原発事故の4年後から0歳~9歳の年代の甲状腺がんの登録数が爆発的に増加しています。
よって0歳~9歳の年代は原発事故から4年後。10歳~17歳の年代は原発事故1年後に甲状腺がんが増加した…と言うより増加が確認されたと言ったほうが適切でしょう。
年代 | 増加の確認は何年後? |
0~9歳 | 4年後 |
10~17歳 | 1年後 |
高性能のエコー診断装置の導入がもっと早ければ、もっと早く見つかったかもしれませんから。
そして年齢を限定せず単に子供の甲状腺がん増加を語る場合には、事故から1年後に甲状腺がんの増加を確認したと言うべきでしょう。
よって福島県の甲状腺検査の責任者である福島県立医科大学の鈴木眞一教授によるこの主張。
「チェルノブイリ(原発事故)では最短4、5年で甲状腺がんが増加した(だから福島県で見つかっている甲状腺がんと被曝の因果関係はない)」 |
鈴木眞一教授の主張は、10歳~17歳の年代は原発事故1年後に甲状腺がんが増加した事実を無視している点。さらに、この資料自体が根源的に抱えている高性能のエコー診断装置の導入がもっと早ければ甲状腺がんがもっと早期に見つかったかもしれないという事実を無視している点で、二重の意味で間違っています。
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