甲状腺がん190人〜公表データ以外の把握、検討へ
(2017年6月5日 ourplanet )より抜粋
東京電力福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」の検討委員会が5日、開催され、事故当時18歳以下だった福島県民38万人に実施している甲状腺検査の新たなデータが公表でされた。それによると、2巡目の検査で、悪性または悪性疑いと診断された子どもは、前回の69人より2人増え71人となった。また3巡目の結果も公表され、4人が悪性または悪性疑いと診断された。1巡目から3巡目をあわせた数は、甲状腺がんの悪性または悪性疑いが191人。手術を終えた人は7人増え、1人をのぞく152人が甲状腺がんと確定した。
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「経過観察」の症例把握の方法を検討へ
福島県の甲状腺検査をめぐっては、2次検査の時点ですぐに穿刺細胞診を実施せず、「経過」となった子どもが、その後、甲状腺がんと診断された場合、検討委員会へ公表しているデータには含まれないことが、今年3月に発覚。県の担当者は会議の中で、「検査後の経過観察の中でがんが判明した場合などは追跡が困難であり、個人の情報の問題もあり、報告していなかった」と説明した。
これに対して委員からは批判が殺到。甲状腺専門医の清水一雄委員は、「根拠のないデータに基づいて検討しなければ、この検討委員会の議論は空論になる。事実がわからなければ、何のために検査をしているかわからない」と指摘。また、国立がん研究センターの津金昌一郎委員も「公表されていない症例を除外したデータでは、国際的な論文は書けないと思う。当然、それらのデータは共有していただきたい」と述べた。また環境省の梅田珠実環境保健部長も、「保健診療に移行すると、別ルートとして扱われるというのは由々しき事態。この検査の信頼性に関わる。現在、実施しているサポート事業には、基礎資料として把握するという目的もあり、把握する努力をすべきだ」と提案。他の委員からも、「個人情報に配慮しながらできるかぎり把握すべきだ」との意見が相次いだ。
星北斗座長は、「できるだけ早期に、枠組そのものを見直すべきかもしれない。全国に散らばる患者を追いかけるのかなどが、今後の検討課題だ」とした上で、現在のデータからこぼれている症例の把握や報告方法について検討する方針を示した。
サポート事業に報告症例外が3例
検討委員会ではじめて、「甲状腺検査サポート事業」の実施状況についても報告があった。福島県民健康調査で2次検査となった、主に18歳以上の患者の医療費を助成する事業で、2015年7月に開始している。報告によると、医療費の助成を受けたのは、2015年度で延べ121件、2016年度で延べ104件の計225件で、交付人数は192人。そのうち、甲状腺がんの手術費用の助成を受けたのは62人だった。また、そのうち3人が、検討委員会でデータが公表されない「経過観察」後にがんが見つかった患者であることも報告された。
市町村別のデータ公表見合わせ
今回初めて、公表された3巡目の甲状腺検査結果。この結果の公表方法が、これまでと大きく変わった。これまで市町村単位で公表されていた結果報告を変え、避難指示が出るなどした13市町村、中通り、浜通り、会津地方の4つの地域に分けて、人数を公表したのである。
甲状腺検査を担当している福島県立医大の大津留晶教授は、「レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するガイドラインでは、人口2000人以下の市町村別によるデータの開示をしないこととされている」などと変更の理由を説明したが、福島大の清水修二委員が「相当、重要な変更だ」と反発。「これまで通り市町村別の数字を追跡する必要があるのではないか」との見方を示した。また、山梨大学の加藤亮平委員は「4つの地域に分けた理由は何か。」などと質問。これに対し。大津留教授は、4つの地域分けが、行政単位の実務的なものであると認めた。また、国立保健医療か学院の﨔田尚樹委員は、「検討のデザインや形跡方法をあらかじめ決めておかないと恣意的になる」と批判。さらに広島大学の稲葉俊哉委員も、地域分けが大きすぎるのではないかと指摘し、「具合いの悪いデータを隠しているのではないか疑われる恐れがある」と懸念を表明した。最後に、清水委員が再び発言し「私が心配しているのは、この県民健康調査音信頼性を下げること。それは避けたい。非常に重要なことなのに、急に変更するというのは、この調査の信用性を低下させる」と警鐘を鳴らした。星座長は、これらの意見を受け、発表方法について引き続き議論するとした。
甲状腺がんの結果は以下のとおり
(※1巡目の1人は手術後の確定診断で良性結節)
全文はコチラ
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◆福島医大が小児甲状腺がんを事実上隠蔽→何人の子供が隠ぺいされた?
(2017年6月4日 福島原発事故の真実と放射能健康被害)より抜粋
今回は、2017年3月30日にOurPlanet-TV(アワープラネット・ティービー)がスクープし、その後NHKが夜7時から放送している「ニュース7」で報じるなど大手マスコミや全国紙の新聞社もいっせいに報道した『福島原発事故当時4歳だった福島県の男児の甲状腺がん発病を、福島医大が未報告…つまり事実上隠ぺい』していた問題を特集します。※1
福島原発事故で被ばくした福島県の子供達を対象とする甲状腺がん検査。福島県からの委託を受けて福島県立医大が実施しています。
この福島原発事故当時4歳だった男の子は、経過観察も甲状腺がんの手術も福島県立医科大学で受けていました。にもかかわらず福島医大は報道される当日ギリギリまで、この男の子の存在を黙っていたわけです。
では、なぜ今回…福島原発事故当時4歳だった男児の甲状腺がん患者がたった1人見つかっただけで、ハチの巣をつついたように大騒ぎになったのか?
理由は2つあります。
【1】福島原発事故が原因でないとする根拠の1つが崩れる
2016年2月15日、福島県の第22回県民健康調査検討委員会は「(福島県内で多発している子供達の甲状腺がんは福島原発事故の)放射能の影響とは考えにくい」とする『中間とりまとめ』をおこない、その際に放射能の影響を否定する根拠を4つ示しました。※3
1.被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小さいこと
2.被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと
3.事故当時5歳以下からの発見はないこと
4.地域別の発見率に大きな差がないこと
今回新たに見つかった事実上…隠蔽されていた男の子は、福島原発事故当時4歳でしたから、たった1人見つかっただけでも福島原発事故の影響を否定する根拠の3.が崩れることになります。
ただしこの
3.事故当時5歳以下からの発見はないこと
は、今回の発覚を待つまでもなく、とっくに崩れ去っている根拠です。
いつ崩れ去ったのか?それは『中間とりまとめ』からたった4カ月後、次の県民健康調査検討委員会でです。2016年6月6日、福島県の第23回県民健康調査検討委員会の席上で福島原発事故当時5歳の男の子が1人新たに甲状腺がん及び疑いに増えたことが報告されます。
つまり今回の発覚は、福島原発事故と福島県の子供の甲状腺がんの多発との因果関係を否定する
3.事故当時5歳以下からの発見はないこと
の根拠を崩すダメ押しの1人となったわけです。
続いて、大騒ぎになった理由の2つ目。
【2】福島医大が事故当時4歳の男児の甲状腺がん発病を事実上隠蔽
福島原発事故で被ばくした福島県の子供達を対象とする甲状腺がん検査。福島県からの委託を受けて福島県立医大が実施しています。
しかし、この甲状腺の検査で例え甲状腺がんが見つかっても…報告しなくても良い抜け穴が存在する。
その点を最初に言及したのは2015年2月2日に開催された福島県の県民健康調査検討委員会の第5回甲状腺評価部会の席上でした。春日文子委員が指摘します。※4
「万が一、経過観察後に悪性の結果(つまり甲状腺がんのこと)が出てしまったような場合には、それはどういう形で結果が出され、まとめられるのでしょうか?」 |
この質問に対し当時、甲状腺検査を担当していた福島県立医科大学の鈴木眞一教授は、こう回答しています。
「幸いにも今のところ…そういう(経過観察後に甲状腺がんを発病した)症例がないので(報告自体必要ないので)報告はしていませんけど、そういう(経過観察後に甲状腺がんを発病)があれば(定期的に公表している福島県の甲状腺検査の報告書とは)別枠で報告となると思います。経過観察中に発見された悪性腫瘍ということ(で別枠で報告)になると思います。」 |
甲状腺の検査で例え甲状腺がんが見つかっても…報告しなくても良い抜け穴とは、経過観察後に甲状腺がんになったケースです。
まず福島県の甲状腺がん検査の対象は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた18歳以下だった子供達、さらに原発事故後の約1年間の間に福島県内で生まれた子供達も検査の対象です。検査対象の子供達は合計で約38万人います。
検査対象の福島県の子供達38万人 |
この甲状腺ん検査対象の福島県の子供達38万人は、まず甲状腺にエコーを使った一次検査を受けます。一次検査を受けた子供達は、甲状腺のしこりの有無などで4つの判定に分類されます。A1、A2、B、Cの4種類です。
検査対象の福島県の子供達38万人 | |||
一次検査 | |||
A1 | A2 | B | C |
そしてB、C判定になった子供達だけ、さらに二次検査を受けます。
B | C |
二次検査 |
二次検査を受けた子供達は、検査結果によって2タイプに分類されます。
まず1つ目の再診不要は、また2年後におこなわれる定期検査まで診療の必要はないよ、という事実上の安全宣言です。それに対して2つ目の通常診療等は、通常の保険診療枠として6か月又は1年後に再診する必要がある子供達と、これからさらに穿刺細胞診を受診する必要がある子供達で構成されます。
二次検査 | |
再診不要 | 通常診療等 |
つまり通常診療等は、名前に通常診療という言葉があって一見、問題のない子供達と誤解される方もいるかもしれません。しかし、その実態は6か月又は1年後に再診する必要がある子供達…これはつまり経過観察の子供達ですし。残りの穿刺細胞診を受診する必要がある子供達も、穿刺細胞診の受診後には、甲状腺がん及び疑いの子供達と経過観察の子供達にわかれます。全然、通常じゃないわけです。
経過観察+甲状腺がん及び疑いの子供達は、2つに分類されます。
まず6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達。
そして穿刺吸引細胞診を受診する必要がある子供達です。
経過観察+甲状腺がん及び疑い | ||
2708人 | ||
経過観察 | 細胞診実施者 | |
1967人 | 741人 |
穿刺吸引細胞診を受診した子供達は、さらに2つに分類されます。
まず6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達。
そして甲状腺がん及び疑いの子供達です。
経過観察+がん及び疑い | ||
2708人 | ||
経過観察 | 細胞診実施者 | |
1967人 | 741人 | |
経過観察 | がん及び疑い | |
556人 | 185人 |
6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達は…
1967人+556人=2523人
そして経過観察になった子供達2523人のうち何人が甲状腺がんになったのか?
は、鈴木眞一教授(福島県立医大)が言ったような別枠での報告は今まで1回もありませんでしたから経過観察後に甲状腺がんになった子供は1人もいないんだと一般的に考えられていました。
だからこそ今回…福島原発事故当時4歳だった男の子がたった1人、経過観察後に甲状腺がんになったことがわかっただけで「福島医大による事実上の隠ぺいではないか!」とハチの巣をつついたように大騒ぎになりテレビや全国紙に掲載されることとなったわけです。
ここまでがテレビや全国紙が報道した内容となります。
しかし報道が日本中を駆け巡った3月30日。その翌日の2017年3月31日に記者会見で発表された、ある重要な情報が…完全に抜け落ちて…その後も報道がされ続けています。
では、その重要な情報とは何か?
【3】甲状腺がんになった子供は他にもいる
2017年3月31日、特定非営利活動法人の『3・11甲状腺がん子ども基金』の崎山比早子代表理事が記者会見をおこないました。※5
『3・11甲状腺がん子ども基金』は、福島原発事故後に東日本で甲状腺がんを発病した子供達に経済的支援をおこなっている民間の団体ですが。
実は『福島原発事故当時4歳だった福島県の男児の甲状腺がん発病を、福島医大が未報告…つまり事実上隠ぺい』していることを、検査と関係ない第三者で最初に把握したのはOurPlanet-TVでもNHKでもなく、この『3・11甲状腺がん子ども基金』です。※5※6
「2017年2月に福島県(内)から(3・11甲状腺がん子ども基金に給付金の)申請のあった4人の中に1人(原発)事故当時4歳児(男子)が含まれていた。この(原発事故当時4歳男子の)方は(福島県の)県民健康調査を受け、経過観察も福島県立医科大学でしていたし、(その後の甲状腺がんの)手術も福島県立医科大学で受けたのに、(福島県立医科大学が中心になってまとめているはずの)福島県の県民健康調査の報告書の(甲状腺がん患者数の)中には、この(原発事故当時4歳男子の)方は含まれていない。(だから)問題だと思った」 |
崎山比早子代表理事の記者会見はさらに続き、ある重要な情報が発表されます。
「(3・11甲状腺がん子ども基金は、今日までに)福島県内の(甲状腺がんを発病した)子供54人に療養費を給付したが、この原発事故当時4歳男子以外にも少なくとも5人(の甲状腺がんの子供達)が福島県の県民健康調査の報告書(の甲状腺がん患者数)には含まれていない、と考えられる」 |
つまり甲状腺がんになったのに福島県民健康調査でカウントされていない福島県の子供達は、経過観察後に甲状腺がんになった原発事故当時4歳の男子1人だけでなく、『3・11甲状腺がん子ども基金』が把握しているだけで他に5人もいる。※7
甲状腺がんになっても福島県民健康調査の統計から漏れるパターンは3つ。
1.経過観察後に甲状腺がん
2.福島県民健康調査自体を受けないまま甲状腺がん
3.福島県民健康調査を受けていたが途中で受診を止め、その後甲状腺がん
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参考:第27回「県民健康調査」検討部会及び第7回「甲状腺検査評価部会」の資料
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