2013年9月、東京オリンピックを招致するにあたって安倍首相は、福島原発事故による健康への影響は「今までも、現在も、将来も、問題ないと約束する」とIOC総会で発言しました。そう発言した時点で既に、福島県の18人の子どもが甲状腺がんになり、疑い25人を含めると43人も「がん」が見つかっていました。その後、子どもたちの甲状腺がんは増え続け、2017年6月の発表では、152人のがんが確定し、がんの疑いは38人(これまで「がんの疑い」の153人が手術をして、1人だけ良性で、152人は悪性でした)がんとがん疑いの合計は190人となっています。
*福島県立医大で手術をした子どもの74%(全症例96例のうち72例)は甲状腺がんがリンパ節に転移しており、甲状腺外浸潤や遠隔転移(肺などへの転移)も加えると92%になる。
しかし、この福島県が公表した数字には入っていない事故当時4歳の子どもが甲状腺がんになっていたことが判明したことから新たな事実が分かってきました。それは「福島県が発表した数字に含まれていない子どもが少なくとも6人以上は、甲状腺がんになっている」ということです。
問題は甲状腺がんだけではない
政府統計の総合窓口(e-STAT)統計表一覧の「2016年12月」をクリックすると2017年6月27日公表のデータが出てきます。その中の「12-18 (保管表)死亡数・死亡率(人口10万対),性・死因簡単分類・都道府県(21大都市再掲)別」データの<2016年12月までの都道府県別の死因別死亡率>と「12-19 (保管表)死亡数,性・年齢(5歳階級)・死因簡単分類・都道府県(21大都市再掲)別」データの<年齢階級別の死亡数>から見えてきたことを報告します。
これまで都道府県別の死因別死亡率で、福島県が全国「1位」だった慢性リウマチ性心疾患と急性心筋梗塞は、今回も全国「1位」でした。特に、慢性リウマチ性心疾患は今回初めて死亡率が全国平均の3倍を超え、他県と比べても飛び抜けて死亡率が高くなっています。(左端の1が全国平均で、2が北海道、3の青森から南下して赤色が福島県、右端が沖縄県)
福島県の慢性リウマチ性心疾患は、原発事故前の2010年は全国「4位」でした。
それが、原発事故の翌年2012年に全国「1位」になりました。
そして、先月公表されたデータでは、2016年の慢性リウマチ性心疾患による死亡率は全国平均の3倍を超え、3.11倍になっています。
また、皮膚の悪性腫瘍(がん)の死亡率も今回初めて全国「1位」となっています。
慢性リウマチ性心疾患や急性心筋梗塞などの心臓病と皮膚病は、チェルノブイリ原発事故で汚染された地域で急増したことが知られていますが、同様にチェルノブイリで増加した内分泌や代謝異常などの疾患による死亡率が福島でも年々増加傾向にあり、今回の発表では全国「2位」になっています。
同様にチェルノブイリで急増した糖尿病による死亡率も年々増加して、全国「3位」になっています。
さらに心配なのが、年齢別の死亡数(12-19(保管表)死亡数,性・年齢(5歳階級)・死因簡単分類・都道府県(21大都市再掲)別)で、福島県の子どもたちや若い世代に増えてきている病気です。特に、0歳~4歳児の「異常臨床所見、異常検査所見…」死亡数の増加が心配です。
こうしたデータを見て、あらためて思うことは、日本政府の被ばく対策の異常さです。原発事故のあと福島県で心臓病で亡くなる人が増加し、急性心筋梗塞で全国平均の2倍以上、慢性リウマチ性心疾患で3倍以上の死者が出ています。
子どもたちには、「年間100万人に1~2人の発症」と言われてた子どもの甲状腺がんが、37~38万人しか子どもがいない福島県で200人近く発症し、150人以上が手術をしています。(手術した子どもの74%は甲状腺がんがリンパ節に転移しており、甲状腺外浸潤や遠隔転移(肺などへの転移)も加えると92%)そして、0歳~4歳の幼児にこれまであまり見られなかった病気による死亡率が高くなってきています。
こうした状況がありながら、政府は被ばく対策を取るどころか、チェルノブイリの移住義務である年5ミリシーベルトの4倍の20ミリシーベルトまで安全だと決めつけ、汚染地に住民を戻す政策を強行しています。一刻も早く政府が、目先の経済より人命を最優先する政策に改めることを私たちは求めています。
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