国連人権理事会「子どもや出産年齢の女性は、年間1ミリシーベルトを超える地域への帰還停止」を日本政府に要請

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子供や女性は帰還しないで 国連の声明に政府は懸念
(2018/10/26 10:30 テレ朝NEWS)

福島の原発事故を巡って国連人権理事会は、放射線量が高い地域への子どもや女性の帰還をやめるよう日本に求める声明を発表しました。

 国連人権理事会・トゥンジャク特別報告者:「我々は今後、福島で生まれ育つかもしれない子どもたちの健康について特に心配している」

 国連人権理事会の特別報告者は25日、福島第一原発の事故の後、日本政府が避難指示の解除要件の一つにしている「年間20ミリシーベルト以下」という被ばく線量について、事故の前に安全とされていた「年間1ミリシーベルト以下」にすべきだと述べました。そのうえで、子どもや出産年齢の女性について、年間1ミリシーベルトを超える地域への帰還をやめるよう日本政府に要請しました。これに対して日本は、「帰還は強制しておらず、放射線量の基準は国際放射線防護委員会の勧告に基づくものだ」と反論しました。また、「不正確な情報に基づいた声明が発表されることで、被災地の風評被害が助長されかねない」として懸念を示しました。

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国連の特別報告者 福島への子どもの帰還見合わせを求める
(2018年10月26日 13時03分 NHK)

 国連人権理事会が任命した特別報告者が、25日の国連総会で、福島の原発事故を受けた日本政府の避難解除の基準ではリスクがあるとして、子どもたちの帰還を見合わせるよう求めました。これに対して、日本側は、国際的な専門家団体の勧告に基づいていると反論し、日本側との立場の違いが浮き彫りになりました。

 国連の人権理事会が任命したトゥンジャク特別報告者は、25日の国連総会の委員会で、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20ミリシーベルト以下にしていることについて「去年、人権理事会が勧告した1ミリシーベルト以下という基準を考慮していない」と批判しました。

 これに対し、日本政府の担当者は、この基準は専門家で作るICRP=国際放射線防護委員会が2007年に出した勧告をもとにしており、避難指示の解除にあたっては国内の専門家と協議して適切に行っているとして、「こうした報告が風評被害などの否定的な影響をもたらすことを懸念する」と反論しました。

 この反論に、トゥンジャク特別報告者は、同じ専門家の勧告で、平常時は年間の被ばく量を1ミリシーベルト以下に設定していると指摘し、これを下回らないかぎりリスクがあるとして、子どもたちや出産年齢にある女性の帰還は見合わせるべきだと主張し、日本側との立場の違いが浮き彫りになりました。

政府「指摘は誤解に基づいている」
 トゥンジャク特別報告者の批判について、政府の原子力被災者生活支援チームは、「ICRPの勧告では避難などの対策が必要な緊急時の目安として、年間の被ばく量で20ミリシーベルトより大きく100ミリシーベルトまでとしていて、政府は、そのうちもっとも低い20ミリシーベルト以下になることを避難指示解除の基準に用いている。また、除染などによって、長期的には、年間1ミリシーベルトを目指すという方針も示している」と説明しています。

 そのうえで「子どもなどの帰還を見合わせるべき」という指摘については、「子どもたちに限らず、避難指示が解除されても帰還が強制されることはなく、特別報告者の指摘は誤解に基づいていると言わざるをえない」と反論しています。

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子ども帰還見合わせ要請 国連報告者「年間1ミリシーベルト以下に」
(2018年10月26日 東京新聞朝刊)

 【ジュネーブ=共同】国連人権理事会で有害物質の管理・処分などを担当するトゥンジャク特別報告者は25日、東京電力福島第一原発事故で避難した子どもや出産年齢の女性について、事故前に安全とされた被ばく線量を上回る地域への帰還を見合わせるよう、日本政府に要請する声明を発表した。

 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者は声明に対し「非常に一方的な情報に基づいており遺憾だ。風評被害にもつながりかねない」と批判した。

 福島では避難指示が解除された地域から住民の帰還が進んでいる。日本政府は被ばく線量が年間20ミリシーベルト以下を解除要件の一つとしているが、トゥンジャク氏は事故前に安全とされていた年間1ミリシーベルト以下が適切だとの見方を示した。

 声明は、日本政府には「子どもの被ばくを防ぎ、最小限にする義務がある」と強調した。

 また、原発事故の避難者にとって、住宅無償提供の打ち切りなどが「帰還への多大な圧力になっている」と指摘した。

 トゥンジャク氏ら人権理の専門家3人は8月、原発事故の除染作業員ら数万人が被ばくの危険にさらされているとして、緊急対策を求める声明を発表。日本政府は一方的な情報に基づくとして「緊急対応が必要とは考えていない」と反論した。

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福島への帰還、国連が見合わせを要請 日本政府は反論
(2018年10月26日 23:06 AFP 発信地:東京)

【10月26日 AFP】国連(UN)の人権専門家が25日、東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所事故の汚染地域に女性や子どもが帰還することについて、被ばくの懸念から見合わせを求めたのに対し、日本政府は翌26日、この要請に反論した。

 国連のバスクト・トゥンジャク(Baskut Tuncak)特別報告者は、人々は「政府が以前安全としていた放射線量の基準を超える場所など、危険を伴う地域に帰還を強いられていると感じている」と話した。

 福島第1原発事故の直後、日本政府は被ばく線量の許容限度を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトへ引き上げた。

 この許容限度を再び引き下げるよう要請が出ているにもかかわらず政府がこれに応じていないことについて、トゥンジャク氏は「憂慮している」と述べ、「日本政府には、幼少期の被ばくを予防し、最小限に抑える義務がある」と指摘した。

 これについて、AFPの取材に応じた外務省関係者は、トゥンジャク氏の指摘は一方的な情報に基づくもので、「福島に関して不必要な不安をあおる恐れがある」と反論した。

 日本政府は、被災地域の大部分で避難指示を段階的に解除してきたが、指示は放射線量が引き続き高い場所では依然出されたままとなっている。

 政府は被災地の復興と再生を強く推し進めているが、政府がいう放射線量の「安全」基準が国際基準に一致していないとの批判にさらされている。(c)AFP

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【感想】国連特別報告者の指摘への、政府側の反論が間違っていたことについて
(2018-10-27 OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト)から抜粋

3行まとめ
・国連の特別報告者が、25日の国連総会で、福島第一原発事故の日本政府の避難解除の基準はリスクがあると指摘。

・NHKの記事では、政府の被災者生活支援チームが「特別報告者の指摘は誤解」と反論。

・しかし、その政府の被災者生活支援チームのコメント自体が、ICRP2007年勧告と避難解除の考え方を理解しておらず、間違っている。

ICRP2007年勧告での放射線防護の考え方

2007年勧告では、放射線防護方策の捉え方として、状況を3つに分ける考えが出ました。
緊急時被ばく、現存被ばく、計画被ばく、の3つです。

避難解除は「現存被ばく状況」で
ここで重要なのは、2011年の原発事故発災時の避難基準は「緊急時被ばく」の【20-100mSv/年】のうち、最小値の20mSv/年なのですが、

避難解除は「現存被ばく」の【1-20mSv/年】のうち、最大値の20mSv/年なのです。
同じ、「年20ミリシーベルト」でも意味合いが違うのです。

政府の原子力被災者生活支援チームのコメントの間違い
「ICRPの勧告では避難などの対策が必要な緊急時の目安として、年間の被ばく量で20ミリシーベルトより大きく100ミリシーベルトまでとしていて、政府は、そのうちもっとも低い20ミリシーベルト以下になることを避難指示解除の基準に用いている。」

なので、上記のコメントは、「緊急時被ばく」と「現存被ばく」を混同しています。
コメント前半部分は「避難の緊急時の目安」として「20-100mSv/年」と、緊急時被ばくについて言及していますが、避難解除の基準に用いているのは、現存被ばくの「1-20mSv/年」のため、「そのうちもっとも低い20ミリシーベルト以下」という言葉にはあてはまりません。

「年間の被ばく量で1ミリシーベルトより大きく20ミリシーベルトまでとしていて、政府は、そのうちもっとも高い20ミリシーベルト以下になることを避難指示解除の基準に用いている。」が正しいです。

ですので、「特別報告者の指摘は誤解に基づいていると言わざるをえない」ではなく、

この反論をした被災者生活支援チームの方が、ICRP2007年勧告の現存被ばくと避難解除について、理解されていないのです。

全文

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国連人権理事会が日本政府の福島帰還政策に苦言。 日本政府の避難解除基準は適切か?
(2018.11.01 ハーバービジネスオンライン)から抜粋

国連人権理事会からの苦言
 2011年3月に福島第一原発事故が発生して以降、日本政府が中心となり、放射能汚染を受けた地域の住民に対する避難や除染、そして帰還を支援する政策が行われていることは周知の通りである。その日本政府の政策に対し、10月25日の国連総会にて、国連人権理事会の特別報告者バスクト・トゥンジャク氏が苦言を呈した。各新聞報道や国連のプレスリリース(参照:国連人権委員会リリース)によると、その要点は次のようであったらしい。

・日本政府には、子供らの被ばくを可能な限り避け、最小限に抑える義務がある。
・子供や出産年齢の女性に対しては、避難解除の基準を、これまでの「年間20mSv」以下から「年間1mSv」以下にまで下げること(※mSvはミリシーベルト)。
・無償住宅供与などの公的支援の打ち切りが、自主避難者らにとって帰還を強いる圧力となっている。

 なお、国連人権理事会は2017年にも同様の声明を出しているが、日本政府にそれに従った様子が見られないため、今回の国連総会で改めて通達された。

 国連人権理事会からのこういった苦言に対し、日本政府側は、「避難解除の基準はICRPの2007年勧告に示される値を用いて設定している」、「こういった批判が風評被害などの悪影響をもたらすことを懸念する」などと反論したそうである。

 日本で用いられている「年間20mSv」以下という基準は、福島第一原発事故直後の2011年4月に設定されたものである。日本政府はこの基準を事故から7年半以上も経った今でも維持しているが、それは不適切である。

・・・事故から7年半以上も経った今では、半減期の短い核種はすでに大きく減衰し、半減期が非常に長いセシウム137(半減期は約30年)からの放射線が空間線量率の大部分を占めるようになってしまっている。このような状態になると空間線量率はなかなか下がらず、例えば事故から8年後に年間20mSvの地に帰還したとすると、次の年には年間19mSv程度、帰還の年の3年後でもまだ年間17mSv程度で、帰還から22年ほど経ってやっと年間10mSv程度(帰還の年の半分)にまで下がるのだ。

 被ばくによる癌リスクは「年間」のではなく「合計」の被ばく量によって決まり、合計の被ばく量が大きくなればなるほどリスクが高まってしまうため、これは由々しき事態である。はたして、日本政府はこういった事実を避難者らに伝えているだろうか?

帰還政策について日本政府に求めたいこと

・帰還の年の被ばく量だけではなく、帰還後の5年や10年など、長期間の合計の被ばく量を推定し、避難住民に伝えるべき。そのようにして避難住民に十分な情報を提供した後に、避難住民らに帰還の可否の判断をしてもらうべき。

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【参考サイト】

1万人、白血病労災基準超す 福島第一で被曝の作業員
(2013年8月5日 朝日新聞)

 福島第一原発で事故から9カ月間の緊急作業時に働いた約2万人のうち、白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝をした人が約1万人にのぼることが、東京電力が7月に確定した集計から分かった。作業員の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ。

 原発作業員は年50ミリ超、5年で100ミリ超を被曝すると働けなくなる。これとは別にがんの労災を認定する基準があり、白血病は年5ミリ以上被曝した人が作業開始から1年過ぎた後に発病すれば認定される。原発事故後には胃がんなどの労災基準もできた。

 東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年12月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12・18ミリで、約5割にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血病の「年5ミリ以上」の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる。

原発作業3カ月、20年後に白血病判明
5.2ミリシーベルト被曝 労災認定の男性語る

(2013年8月5日 朝日新聞)




日赤、被曝線量1ミリシーベルトを超える恐れあれば、退避
日本赤十字社 原子力災害における救護活動マニュアル(2016年3月修正版)説明・要約 から抜粋
日赤は、「原子力災害における救護活動マニュアル」を作成し、警戒区域外で活動する一般の災害救護に携わる救護班に許容される累積被ばく線量を1ミリシーベルトとしました。作成に当たっては、国際放射線防護委員会(ICRP)が一般市民に対する1年間の実効線量限度の勧告に準拠することとしました。


ノーベル平和賞の「社会的責任を果たすための医師団」が警告
日本で危機が続く中、人に発癌の危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発癌リスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である。

原発事故 国家はどう補償したのか チェルノブイリ法から抜粋

チェルノブイリ法の特徴は、事故による被ばくが5年後の時点で年間1ミリシーベルトを超えると推定された地域を補償の対象としていること・・・年間被ばく線量が、法律を制定した時に1~5ミリシーベルトの地域では住民に移住の権利が与えられ、移住先での雇用と住宅の提供、引越し費用や移住による喪失財産の補償などが行なわれた。

チェルノブイリ法に基づきウクライナの被災地は4つの区域に分類されました。

強制避難区域:事故直後から住民を強制的に避難させた汚染レベルの高い区域
強制移住区域:年間被ばく線量が法律制定時に5ミリシーベルトを超える区域
移住選択区域:年間被ばく線量が法律制定時に1~5ミリシーベルトの区域
放射線管理区域:年間被ばく線量が法律制定時に0.5~1ミリシーベルトの区域

「安全基準は年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です」
(2011年06月27日 週刊現代)

日本の政府は、福島原発事故の後、一般人の年間被曝限度量を、1ミリシーベルトから一気に20ミリシーベルトに引き上げた。常識で考えて、安全基準が20倍も変わることなどありえない。

「年間20ミリシーベルト、それを基に算出した3・8マイクロシーベルト/時という数値は、ICRP(国際放射線防護委員会)が緊急事故後の復旧時を想定して決めた値です。それが一般生活者の基準になるわけがない。一般人の安全基準はあくまで年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です」(元放射線医学総合研究所主任研究官・崎山比早子氏

甲状腺がん「地域別発症率」避難区域が会津地方の3.2倍
震災時18 歳以下の「福島県の小児甲状腺がん+がん疑い」エリア別発症率(人口10万人あたり)
原発事故による放射能汚染数値が最も高い避難区域の甲状腺がん発症率が最も高く、汚染数値が最も低い会津地方の甲状腺がん発症率が最も低い。
避難区域等13市町村(大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、川内村、富岡町、楢葉町、広野町、川俣町、伊達市、田村市、南相馬市)は、福島県全体の1.9倍で、会津地方の3.2倍も発症している。

【参考記事】

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