福島県の子どもの甲状腺がんが15人増えて131人となり、がんの疑い41人を加えると172人になりました。さらに今回、初めて事故当時5歳以下の子どもに甲状腺がんが見つかりました。
◆皆さん、「6月6日 報道ステーション」の動画を見て下さい
福島「県民健康調査検討委員会」の問題点がよく分かります。
星北斗座長は「チェルノブイリでは、事故当時5歳以下の多くの子どもたちが甲状腺がんになったが、福島では5歳以下の子どもは甲状腺がんになっていないから放射線の影響とは考えにくい」と言っていました。しかし今回、5歳の子どもに甲状腺がんが見つかっても「5歳の人が1人出たからといって評価を変えない」と言いました。
その発言以上に問題なのは、今年3月に「報道ステーション」がチェルノブイリ現地を取材して、5歳以下の子どもに甲状腺がんが多く見つかったのは「原発事故から7~8年たってから」という事実が判明した(津田敏秀・岡山大学教授やロシア研究者の尾松亮氏も指摘していた)にもかかわらず、検討委員会ではこの事実を誰も知らないかのように検討が進んでいることです。福島県の担当者も検討委員も誰も「報道ステーション」の報道を知らないはずはないでしょう。なぜ星北斗座長が「知らない」重要な事実を誰も指摘しないのでしょうか。
◆【報ステ】甲状腺がん、当時5歳児で初めて確認(2016/06/06) 内容書き出し(みんな楽しくHappy♡がいい♪ から転載)
いつも重要な動画の書き起こしをありがとうございます。
小児甲状腺がんに関して、テレビでは、報道ステーションだけが報道。貴重な番組だ。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000076456.html
2016年6月6日 報道ステーション テレビ朝日
小川彩佳:
原発事故以降福島県の調査で、子供の甲状腺がんが多く見つかっているんですけれども、
これまで福島の有識者会議は「原発事故との因果関係は考えにくい」としてきました。
その大きな根拠となっていた一つがこちらです。
被曝の影響が大きいはずの、「事故当時5歳以下の子供で甲状腺がんが発見されていない」ということでした。
しかしですね、今日、原発事故当時5歳だった男の子が甲状腺がんまたは癌の疑いがあるということがわかったんです。
つまり、「(5歳以下で)なし」とは言えなくなったわけですね。
因果関係、どう説明されるんでしょうか?
福島市 午後4時半すぎ
高村昇長崎大学教授:
事故当時0歳から5歳の世代では、チェルノブイリでは甲状腺がんが増えたということ、ま、治験もふまえてそういった表現をしてまいりました。
福島県の県民健康調査検討委員会。
今回、事故当時5歳の男の子が甲状腺がん、または癌の疑いとされたことがわかりました。
ただ、事故当時どの地域にいたのか?など詳しいことは明らかにされていません。
記者:
5歳以下で今回出ましたけれども、被曝の影響は考えにくいというふうな表現を続けるのか?
星北斗座長:
いま、1例出たからと言って、それで科学的云々ということを議論する内容ではないと思います。
なぜ、事故当時5歳以下という年齢が重要なのでしょうか?
実は、前回までの検討委員会では、この年齢層の子供から甲状腺がんが見つかっていないことなどを理由に、「原発事故による放射線の影響は考えにくい」とされてきたからです。
そしてそれは、あのチェルノブイリ原発事故と関係しています。
去年11月、星座長の言葉です。
星北斗座長:
被曝している線量が、ま、一般論としてと言いますか、知られている範囲で比べてみますと、
チェルノブイリと比べて極めて低いという話と、ま、当時の非常に、い、感受性の強い子供たち、小さな子供達からの発生が今のところみられないという二点において、えー、そう(放射線の影響)とは考えにくいというふうに判断しています。
喉仏の下にある甲状腺が、原発事故で出た放射性ヨウ素を取り込んで内部被曝すると癌になるリスクが高まります。
特に幼いこどもは、大人より放射線の影響を受けやすいとされます。
チェルノブイリでは事故当時5歳以下の子供たちが多く甲状腺がんになりました。
逆に福島ではその年齢層で見つかっておらず、それが「原発事故との因果関係は考えにくい」という根拠になっていました。
星座長は今回、この説明について微妙に修正しつつ、「評価は変えない」
つまり、「因果関係は考えにくい」と改めて明言したのです。
記者:「(事故当時)5歳以下がいないから」というのを今回どう表現を変えるんですか?今日は。
星北斗座長:
当時5歳以下からの発症は非常に少ないというふうに言い換える必要があるのかもしれませんが、
少なくとも5歳の人が1名出たからと言って、それによってすなわちその評価を変えるということではないと思います。
今年3月11日の特集で私たちが取材したチェルノブイリから80kmの街。
ここでも事故当時5歳以下だった子供たちに甲状腺がんが多数発症していますが、それは、早くても事故から7〜8年経ってからでした。
ウクライナ チェルニーヒウの医師:
すぐに発症したわけではありません。12歳から14歳になって、初めて甲状腺がんが見つかったのです。
事故から5年余りで新たな展開を見せた福島の甲状腺がん問題。
甲状腺がんに関しましてはわかっていないことが多すぎるんですね。
そんな中実際に、確認がこれまでされていなかった5歳以下の子供で今回確認されたわけですから、「放射線の影響は考えにくい」で終わらせるのではなくて、しっかりと調べていく。
これが必要だと思います。
「0歳で被ばく 甲状腺がんに チェルノブイリから見た福島」
311から5年(2016年3月11日 報道ステーション)文字起こし
(みんな楽しくHappy♡がいい♪ )から抜粋
現在のウクライナとベラルーシ、そしてロシアの3カ国で35万人が強制避難。
事故当時18歳以下の子供7000人以上から被ばくが原因とみられる甲状腺がんが発生した。
我々がまず訪れたのは原発からおよそ80km離れたウクライナ北部の地チェルニーヒウ。
地域の汚染度は比較的少ないとされ、避難区域にはならなかった。
一方で、事故当時子供だった50人以上から甲状腺がんが見つかっているという。
そのひとり、エカテリーナ・チュードワさん30歳。
事故当時11ヶ月の時に原発事故が起きた。
エカテリーナさんの母:
具体的にどんな事故が起きたのかは全く知りませんでした。
子供たちへの避難指示も出されなかったので、外で娘を遊ばせていました。
事故直後の風向きなどから得られたデーター。
事故の3日後に放射性ヨウ素がこの地域に流れたのがわかる。
エカテリーナさんの甲状腺にがんが見つかったのは14歳の時だった。
原発事故の影響を受けるとは夢にも思っていなかったエカテリーナさん一家。
福島では今のところ出ていない事故当時0歳から5歳の甲状腺がん。
ここチェルニーヒウでは発生している。
地元医師はこの年齢層の発症に特徴があったと話す。
チェルニーヒウ市立診療所 ワレンチーナ・ワーヌシュ内科部長:
すぐに発症したわけではありません。
12歳から14歳になって初めて甲状腺がんが見つかったのです。
5歳以下の子供たちの発症は思春期に入ってから。
つまり、早くても事故から7〜8年経ってからだった。
ただ、なぜそうなったのか?はわかっていない。
研究拠点となっているのが、首都ミンスクにある国立甲状腺がんセンターだ。
長年甲状腺がんの研究を続けてきたユーリ・デミチク医師。
被ばく線量と甲状腺がんの関係について、まずこう指摘した。
ベラルーシ 国立甲状腺がんセンター ユーリ・デミチク所長:
被ばく線量が低くても甲状腺がんが発生する可能性はあります。
「これ以下なら大丈夫」という値はありません。
福島)甲状腺がんの県見解、ロ報告書と矛盾 尾松氏講演
(2016年4月18日 朝日新聞)
チェルノブイリ原発事故から30年の26日を前に、「避難の権利」を明記したチェルノブイリ法を日本に初めて体系的に紹介したロシア研究者の尾松亮氏がこのほど、東京都内で講演した。「ロシア政府報告書」を取り上げ、県や県立医大が県内の小児甲状腺がんの「多発」について原発事故の影響を否定する論拠にした「チェルノブイリ後の事実」とは異なる事実が報告されている、と指摘した。
東京電力福島第一原発事故事故後、子どもたちの甲状腺検査を進めてきた県は有識者による検討委員会などで、罹患(りかん)統計から推定される有病数に比べ「数十倍のオーダーで多い甲状腺がんが発見されている」と認めつつ、「放射線の影響とは考えにくい」と主張。
その論拠として、チェルノブイリ事故後に甲状腺がんが多発したのは①事故から5年後②5歳以下であるのに対し、福島では①がん発見が1~4年で早い②事故当時5歳以下の発見がない③被曝(ひばく)線量がはるかに少ない――などとしてきた。
2011年発表のロシア政府報告書を詳細に検討した尾松氏は、報告書の内容が、県側の説明と「大きく食い違う」と批判。同報告書では甲状腺がんは①事故翌年から著しく増え(年平均1・7倍)、4~5年後にさらに大幅に増加②事故時5歳以下に急増するのは事故約10年後で彼らが10代半ばになって以降③被曝推計の最高値比較では大差があるが、低線量被災地でも増加――などと分析していることを明らかにした。
そのうえで尾松氏は「現時点でデータは少ないが、チェルノブイリ後の10代での増え方などは違いより類似が目立つ」とし、「先例となる被災国の知見をゆがめて伝えることで、教訓を生かせなくなるのではないか」との懸念を表明した。(本田雅和)
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◆福島の子ども、甲状腺がん「多発」どう考える 津田敏秀さん・津金昌一郎さんに聞く
■原発事故の影響、否定できぬ 津田敏秀さん 岡山大大学院教授(環境疫学)
県は、チェルノブイリ原発事故では4~5年後から乳幼児で増えたのに対し、福島では10歳以上に多いなど、違いを強調する。しかし、ベラルーシやウクライナの症例報告書を見ると、チェルノブイリ事故の翌年から数年間は10代で増えているなど、福島と驚くほど似ている。
予想される甲状腺がんの大発生に備えた医療体制の充実が必要だ。甲状腺がんは初期の放射性ヨウ素による内部被曝だけが原因ではなく、他の放射性物質からの外部被曝の影響を示す研究もある。甲状腺がんだけでなく、すべてのがんへの影響を考えれば、妊婦や乳幼児には保養や移住も有意義だ。放射線量が高い「避難指示区域」への帰還を進める政策は延期すべきで、症例把握を北関東にも成人にも広げる必要がある。
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