チェルノブイリに劣るフクシマの被曝対策

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第1章 第1条 汚染地域とされるのは年間1ミリシーベルト

(画像:原発事故 国家はどう補償したのか ~チェルノブイリ法23年の軌跡~ NHK ETVより)

31年前の今日(1986年4月26日)チェルノブイリ原発4号炉がメルトダウンを起こしました。

原発事故から5年後、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは「チェルノブイリ法」を制定し、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われています。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務があります。

ところが日本では、年20ミリシーベルト以下の汚染地に帰還を進めています。

 

20ミリシーベルト以下 健康影響なし 福島民報

 

この「20ミリシーベルト基準」が異常だということは誰にでも分かります。

そもそも原発事故前の基準は、年間1ミリシーベルトでした。

日赤の「原子力災害時の医療救護の活動指針」には「救護活動中の累積被ばく線量は、1 ミリシーベルトを超えない範囲とします。」「作成に当たっては、国際放射線防護委員会(ICRP)が一般市民に対する1年間の実効線量限度の勧告に準拠することとしました」と明記されています。

病院のレントゲン室など「年間5.2ミリシーベルト以上」被ばくする場所は、放射線管理区域とされます。18歳未満の就労が禁止され、飲食も寝ることも禁止されます。

1950年代半ば、イギリスのアリス・スチュワート博士は10歳未満の子どものガンや白血病が急増した原因を研究し、お母さんたちが妊娠中にエックス線を浴びたことをつきとめました。博士が発見したのは、数回のエックス線照射でガン発生率が倍増することです。また、妊娠3ヶ月未満にエックス線を浴びたお母さんの子どもは、ほかのお母さんの子どもより10〜15倍ガンの発生率が高かったのです。

原発で働く作業員が白血病になった場合の「労災認定基準」は、年5ミリシーベルト以上の被ばくです。(累計5.2ミリシーベルトで労災が認定されています

 

NHK:原発事故作業員 白血病の労災認定

 

2011年4月(原発事故が起こった翌月)当時、内閣官房参与だった小佐古敏荘東大教授(放射線安全学)が辞表を提出しました。学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに採用されず、「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」「容認すれば私の学者生命は終わり」「自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」と涙を流しながら抗議の辞任をしました。

小佐古敏荘「小学生に20ミリSvは、私には許すことができません」

 

こうした問題について、国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が重要な指摘をしています。

 

福島第1原発事故:国連報告書「福島県健康調査は不十分」

(毎日新聞 2013年5月24日)から抜粋

 

東京電力福島第1原発事故による被ばく問題を調査していた国連人権理事会の特別報告者、アナンド・グローバー氏の報告書が24日明らかになった。福島県が実施する県民健康管理調査は不十分として、内部被ばく検査を拡大するよう勧告。被ばく線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域は福島以外でも政府が主体になって健康調査をするよう求めるなど、政府や福島県に厳しい内容になっている。近く人権理事会に報告される。

 

報告書は、県民健康管理調査で子供の甲状腺検査以外に内部被ばく検査をしていない点を問題視。白血病などの発症も想定して尿検査や血液検査を実施するよう求めた。甲状腺検査についても、画像データやリポートを保護者に渡さず、煩雑な情報開示請求を要求している現状を改めるよう求めている。

 

また、一般住民の被ばく基準について、現在の法令が定める年間1ミリシーベルトの限度を守り、それ以上の被ばくをする可能性がある地域では住民の健康調査をするよう政府に要求。国が年間20ミリシーベルトを避難基準としている点に触れ、「人権に基づき1ミリシーベルト以下に抑えるべきだ」と指摘した。

 

このほか、事故で避難した子供たちの健康や生活を支援する「子ども・被災者生活支援法」が昨年6月に成立したにもかかわらず、いまだに支援の中身や対象地域などが決まっていない現状を懸念。「年間1ミリシーベルトを超える地域について、避難に伴う住居や教育、医療などを支援すべきだ」と求めている。

 

「低線量被ばく 考慮を」 国連人権理事会で勧告 グローバー氏

(2014年3月21日 東京新聞)から抜粋
国連人権理事会で福島原発事故の健康被害に関する勧告を日本政府に出したアナンド・グローバー氏が20日、東京都内で講演し、低線量被ばくの影響を依然として軽視する政府の姿勢を批判。福島県以外の地域でも健康管理調査を行うよう求めた。

 

東京新聞:国連人権理事会で勧告 グローバー氏-「低線量被ばく-考慮を」 日本政府の対応批判

 

 

日本には、年間1ミリシーベルト以上の汚染地に「避難の権利」がないため、「自主避難」した人々の「住宅無償提供」も先月末で打ち切られました。こうした非人道的な政策の変更を私たちは求めています。

 

ウクライナの「チェルノブイリ法」―チェルノブイリ事故に関する基本法
(ウクライナ科学アカデミー オレグ・ナスビット,京大原子炉実験所 今中哲二)から抜粋

チェルノブイリ事故が人々の健康にもたらす影響を軽減するための基本概念として,1991年2月27日,ウクライナSSR最高会議によって採択された.この概念の基本目標は,最も影響をうけやすい人々,つまり1986年に生まれた子供たちに対するチェルノブイリ事故による被曝量を,どのような環境のもとでも年間1ミリシーベルト以下に,言い換えれば一生の被曝量を70ミリシーベルト以下に抑える,というものである.

 

基本概念文書によると,「放射能汚染地域の現状は,人々への健康影響を軽減するためにとられている対策の有効性が小さいことを示している.」それゆえ,「これらの汚染地域から人々を移住させることが最も重要である.」

 

事故影響軽減のための基本法

法の第1条は,チェルノブイリ事故による放射能汚染地域をつぎのように定義している.「事故前に比べた現在の環境中放射性物質の増加が…住民に年間1ミリシーベルト以上の被曝をもたらし得る」領域が汚染地域である.こうした地域では,住民に対し放射能防護と正常な生活を保障するための対策が実施されねばならない

 

第1条では,被曝量が年間1ミリシーベルトを越える可能性のある領域が汚染地域と定義されているが,第2条のゾーン区分では,年間1ミリシーベルト以下の領域が(0.5ミリシーベルト以上の)放射能管理強化の第4ゾーンに含まれている.

チェルノブイリ法の基準

住民の健康確保という観点からは,疾病の危険性を軽減するための対策が重要である.法に従い,政府は以下の方策を実施せねばならない.汚染地域住民の毎年の健康診断と早期の病気予防,住民への十分な量の,医薬品,飲料水,クリーンな食料の供給,(その他は省略)

「年1ミリシーベルト」で避難の権利 ロシアのチェルノブイリ法

(2012/05/24 みんな楽しくHappyがいい)から抜粋

「チェルノブイリ法」では、年間被ばく線量が0.5ミリシーベルト(土壌汚染が37kベクレル/m2)以上の地域で、医療政策を含む防護対策が行われる。1ミリシーベルト以上であれば、避難の権利があり、5ミリシーベルト以上の地域は、移住の義務がある。

 

チェルノブイリ法の避難基準

【一つ目は疎外ゾーン】
日本でいう警戒区域にあたる地域。ここは立ち入りが禁止されている。

 

【二つ目は退去対象地域】
住民が受ける平均実効線量が年間5ミリシーベルトを超える可能性がある地域で、住民は移住すべきとされている。ここに住んでいた住民は被害補償や社会的な支援を受ける権利がある。

 

【三つ目が移住権付居住地域】
住民が受ける平均実効線量は年間1ミリシーベルトから5ミリシーベルトの地域に当たる。避難するかどうかは住民自身が判断する。

 

【四つ目は特恵的社会経済ステータス付居住地域】
年間0.5ミリから1ミリシーベルトの地域で、医療政策を含む防護対策が行われ保証金も支払われる


◆「安全基準は年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です

(2011年06月27日 週刊現代)

日本の政府は、福島原発事故の後、一般人の年間被曝限度量を、1ミリシーベルトから一気に20ミリシーベルトに引き上げた。常識で考えて、安全基準が20倍も変わることなどありえない。

「年間20ミリシーベルト、それを基に算出した3・8マイクロシーベルト/時という数値は、ICRP(国際放射線防護委員会)が緊急事故後の復旧時を想定して決めた値です。それが一般生活者の基準になるわけがない。一般人の安全基準はあくまで年間1ミリシーベルト、0・19マイクロシーベルト/時です」(元放射線医学総合研究所主任研究官・崎山比早子氏


空間線量汚染地図:東洋経済
(出典www.toyokeizai.net

●IAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)を超えて

年間1ミリシーベルトを提唱したミハイル・マリコ博士(ベラルーシ科学アカデミー)
チェルノブイリの防護基準、年間1ミリシーベルトは市民の声で実現されました。核事故の歴史は関係者が事故を小さく見せようと放射線防護を軽視し、悲劇が繰り返された歴史です。チェルノブイリではソ連政府が決め、IAEAとWHOも賛同した緩い防護基準を市民が結束して事故5年後に、平常時の防護基準、年間1ミリシーベルトに見直させました。それでも遅れた分だけ悲劇が深刻になりました。フクシマでも、早急な防護基準の見直しが必要です


文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト

放射能汚染地図 文科省 電子国土版

衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
(1) ウクライナ
1.チェルノブイリ原子力発電所視察
2.放射性廃棄物保管場「ブリャコフカ」及び予定地「ヴェクトル」視察
3.チェルノブイリ博物館視察
資料『チェルノブイリの長い影―チェルノブイリ核事故の健康被害』
<研究結果の要約:2006年最新版

6.非常事態省チェルノブイリ立入禁止区域管理庁長官等との懇談
資料・チェルノブイリ原子力発電所事故により放射性物質で汚染された地域の法制度に関するウクライナ国家法(1991年)
チェルノブイリ原発事故被災者の状況とその社会的保護に関するウクライナ国法(1991年)(概要及び本文)

*文書が見られないときは、画面右上にある「ほかのビューアで開く」を押して見て下さい。

 

原発事故 国家はどう補償したのか ウクライナの補償NHK-ETV 動画

 

(投稿日:2017年4月26日)

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