「子どもの未来をサポートするフードバンクの取り組み」
フードバンク北九州ライフアゲイン代表 原田昌樹氏
みなさんこんにちは、フードバンク北九州ライフアゲインの原田と申します。
今日は午前中から 中村さんより スロー・良いニュースであったり、そしてまた吉岡さんにいただいた話、そして今セヴァンさんから頂いた話をお聞きしながら、全てが繋がっているなと私自身感じて、今から話をさせていただきます。
突き詰めたら、私たちが本当に大切なものを、人間が本当に人間として人間らしく生きるために大切なものってうのは、そんなに複雑なものではない、もっとシンプルなものを私たちはもう一回見つめ直す時期に来ているのではないかと、そういう風に思います。
私が今取り組んでいるフードバンクの話をさせていただきますけれども、「子どもの未来をサポートするフードバンク」を私たちのライフアゲインは目指しています。
フードバンクは、後ほどもご説明しますが、様々な食べられるけれども廃棄されている、そういう食品を扱うんですが、そのお話をする前に、まずみなさんに知っていただきたい事実があります。
それは世界中で食べ物がないということが原因で死んでいる子どもたちが5秒に1人いるからです。
今日朝から講演会がずっと続いていますけれども、その中でも何人もの子どもたちが死んでいきました。
でもそれがニュースで報道されることはありません。
1年に690万人の子どもたちが食べ物がないということで死んでいます。
それが日常の当たり前のことだから、何も報道されませんが、私たちの心の問題であり、私たち一人ひとりが自分の問題として今日話されたことを一つひとつを受け取って、そしてアクションを起こしていかなければ、今日の講演会はいいお話だったなあで終わってしまうんじゃないかと思います。
でもそうしてはいけないと私自身お話を聞きながら思わされております。
80%の地球の子どもたちは食べ物がなくて死んでいく、その状況下に置かれています。そして20%という人口比でいえば少ない先進国と言われている私たちの国も含めた人たちが、大量の食品を輸入したり、そしてそのような人たちから買ったりしながら大量に捨てています。
私たちの国のことでいうと、年間輸入の食品は5000万トンを超えています。しかし、その3分の1にあたる1788万トンが捨てられています。私たちの日常のご飯の量でいえば、3食に1食を私たちが捨てているということです。その中で食品ロスというのは、前の年に農水省が出している数字は642万トンというかなり正確な値が出ていますけれども、大体年間で500~800万トンといわれています。これは年間のお米の総生産量に匹敵する量が食べられるのに何らかの理由で捨てられているようです。
その半分は、企業や農家生産者の側から出ていますが、もう半分は私たちの日常から出ている量として、私たちは自覚しなければならないのです。
企業や農家から出ている代表的なものとして、ここでは詳しくは延べませんけれども1~11の大きな原因が考えられます。1つ2つをご説明すると、例えば1つ目の包装上の不具合というのは、私たちのフードバンクにある企業様から2tを超える缶詰を受け取ってくれないかという相談があり、11tトラックで2tの缶詰が送られてきました。箱には二等品と書かれてありましたが、ほんの少しへこんでいるだけであり、ほんの少し破れているものがほとんどでした。おそらくここにいる人たちがその箱を下まで運ぶよう頼んだ時に、誰かはどこかの壁にぶつけるでしょうし、誰かは落とすでしょう。その程度のへこみくらいです。でもそれはもはや商品とは言われずに、中の内容物に何らかの、例えばへこみであるとか内容物が飛び出している可能性がほんの少しでもあればメーカーはそれを卸すことはなく二等品として廃棄されるわけです。
食品検査というものが6番目に書かれていますが、毎週私たちは月曜日に1つのメーカーから出る1つのふ頭で1日に出るだけの量のバナナをいただいています。それは3000本のバナナです。輸入されたばかりで、検疫の検査のためにビニール袋を開けて、何か虫が入っていないか等を検査しますが、一旦ビニール袋を開けたらその中に入っているのが青いバナナでも、それはもう商品とは呼ばれずに捨てられます。それを私たちは3000本毎週受け取って、そして様々な生活にゆとりを無くされている方々に配っております。
例えばそういう風なものです。
それより私たちが大量に捨てている国であれば、私たちの国は豊かで何の問題もないかというとそうではありません、これは先進国と言われるOECD諸国の相対的貧困率の比較ですけれども、相対的貧困というのは、国民の平均所得の半分以下で生活している方々の率ということです。それが私たちの国は下から4番目です。
これが何を意味しているかお分かりになりますか?
私たちの国は、もはや豊かとはいえないということです。格差がどんどん広がってきています。お金を持っている人たちはもちろん持っているけれども、持っていない人がどんどん増えてきて、真ん中が抜けてきているような、そういう状況の中で私たちはこの国で生活をしているわけです。
フードバンクというのはそのように食品のロスがそれだけあり、まだ賞味期限も切れていなくて品質も安全に守られているのであれば、それを捨てないでください。もちろんそれは環境問題もありますが、私の心の中でそれを強く訴えるものはやはり人道的なことで、5秒に1人の子どもたちがそれを食べられずに死んでいるのに、私たちの国でそれを捨てていいんだろうかと、捨てさせていいんだろうかという思いが私の心の中ではいつも原動力としてあります。
その食べ物を生活にゆとりを無くされている方、もしくはそういう方々を支援している団体に無償で提供しているのがフードバンクの活動です。
現在は3年目に入りますが、様々な福岡県下の企業、だいたい21社程度の企業から私たちに食品を下さるように今なっています。
福祉施設であれば北九州で63か所、福岡地区で11か所、個人であれば北九州市で45世帯、福岡地区で1世帯の方々に今その食品を提供しております。
これはひとつにやはり、ルールをもってやっています。ここではそれを詳しく述べることは致しませんが、私たちの活動はその方々の自立を妨げるためにやっているわけではありませんから、一つひとつのルールを決めながら食品の提供をしております。
ここで私自身が申し上げたいことは、食べ物に困っている世帯に渡しているからと言って、私たちの事業は食べ物を渡して終わりという事業ではありません。
私たちのミッションは、将来子どもたちが 我々の事業を通して、環境に左右されず社会を担える大人へ成長できるようサポートするというミッションです。
どうしてここで、生活にゆとりを無くされている人たちにはいろんな人たちがいるじゃないか、どうして「子ども」って特化した言葉を使っているのか。
正直わたしは二十何年間ずっと子どものサポートや大人の自立支援の取り組みをやってきて、共通することは小さなころの子どもの家庭が壊れている。その中で大人になったときに、その大人の方々は、一生懸命わたしたちもサポートしますけれども、なかなか社会に復帰できないんです。ですから、小さな子どもの時に、なんとかその子どもたちが大人になってもしっかりとこの国を担えるような大人へとサポートしていかなければ、わたしは20年後30年後この地球と共にこの日本自身もどうなっているんだろうかという危機感の中で、これはきれいなミッションではなくて、危機感の中でこのミッションを立てているわけです。
そしてビジョンは、この事業を通して食べ物を大切にする心を育てるとともに、貧困と孤立によって食べられない・働けない・教育が受けられない人々を一人も生み出さない。誰もが尊厳をもって、「その人らしい」生活を営むことができる地域社会の実現。
これは私たちだけのビジョンではなく、午前中に話された中村さんのビジョンでもあり、吉岡さんのビジョンでもあり、そしてセヴァンさんや講演に関わる皆さんのビジョンじゃないかと私はそのように思います。
そのようにここに描かれている数字は、みなさんも様々なところで報道されている数字なので知っておられると思いますが、6人に1人の子どもたちが給食に栄養を頼らなければならない状況下に暮らしています。
私の地域でも「そんな子どもいるのか?」って言われる方がいます。
でもその現場に立っている私から言えば、見えていないんです。しかし、おられます。
その中でも九州の子どもは、九州の中でも福岡県の子どもは、九州の中でも23%という高い数値で子どもの貧困率が取り上げられています。
子どもの貧困というのは単に、その子どもたちが食べるものに困っているだけではなくて、これは生活保護世帯の連鎖を示している図ですけれども、親が生活保護を受けているときに、その子どもも生活保護を受けていってしまう率が4分の1にあたる。母子世帯においては41%にあたる。連鎖しているということです。貧困は連鎖していっているんです。
そしておなかをすかせている子どもは、私が今まで子どもをサポートしてきて見えるのは、おなかがすいている、その見えないところでは、その子どもたちの心も腹ペコなんですね。お母さんが忙しくて抱きしめてあげられる時間がなかったり、一緒にご飯を食べる時間がなくていつも一人でご飯を食べていたり、お金だけを置かれて買うのはいつもお菓子であったり、そういう中で子どもたちは不登校になってしまったり、心が傷ついて精神的に病んでしまったり、もしくはけがをしてすぐに骨が折れてしまうような栄養の改善が求められる状況で生活していたり、思春期になってからはお金を得るために、女の子は売春や様々な風俗の世界に入らざるを得ない、教育を受けていないからそうせざるを得ない状況でお金を得たり、男の子においては私が黒崎の駅前に10年間立って、マイクをもって話したときに出会った少年たちは、様々な覚せい剤の売り子にさせられてしまったり、その子たちの多くは発達障害であったり知的障害であったり、その子たちを利用する悪い大人の、ある意味では道具として使われて刑務所に入るのは少年たちです。
そういう子どもたちを私は何人も見てきました。
もちろん勉強する時間がないから教育も遅れていきました。
だから貧困というのは単なる連鎖ではなくて、おなかをすかせている子どもたちのもっと根っこには、もっと大きな問題があることに目を止めなければならないと思っています。
若者の心の貧困の状態ですけれども、日本は世界20か国の青少年のアンケートにおいて「自分はダメだ」と思っているのがダントツ的に高い数字です。逆に親を尊敬している、先生を尊敬しているという数字はどの国よりも低い。
右側の日本を含む7か国の若者意識調査では、自分の将来に明るい希望を持っているという青年たちは最も低く、40歳になったとき幸せだと思っている、そういう若者の意識も最も低い数字です。
それはもしかしたらみなさんの、私の数字かもしれないし、今の子どもたちのもちろん数字ではありますけれども、私たちの持っている数字かもしれません。それをどこで断ち切るかなんです。わたしたちから断ち切らなければこの連鎖は社会に蔓延していくだろうと。わたしはそう思っています。
そしてここにあるのは自殺死亡率の国際比較で若者の死因のトップが自殺なのは日本だけです。このような状況の中で私たちは活動しております。
ですから私たちの事業は食べ物をいただいて食べ物を配って終わりというものではなく、その人たちの多くが見えていない限り、その人たちを見つけるための仕組みを作らなければならないと思っています。
行政だけではなく様々なところと連携し、子どもを支援しているような様々なところから情報をもらって、その人たちに食の支援をし、そして食の支援だけにとどまらずにファミリーサポートの事業をして、その子どもたちが未来を希望をもって歩むことができるようにしなければならないと思っています。
そこで全国では子ども食堂というものが増えています。それはおなかをすかせた子どもたちに無料でご飯を提供するというはたらきです。それはとても素晴らしいことですけれども、その多くは月に1回や2回で食べ物を提供して終わってしまうような活動が多く見受けられます。それはわたしは大切な事業だけれども、これだけでは今私たちが申し上げてきたことを実現するのは難しいと思っております。
そこで心の空腹を満たすサポートとして「弧食から団らん食へ」親子にとって地域というもう1つの家族がそこにあり、子どもが将来「僕はここで育てられたんだ」と胸を張って言えるもう1つのホームが、私は社会に必要じゃないかと思っています。
そのような思いを他のNPO団体とも共有して、今年の夏休みに行背の方からも言われました。「原田さんが言っていることはよくわかるけれども、どういうことを目指しているのか見せてほしい」と。そこで私たちの事務所は今八幡の中央町商店街の中にありますけれども、空き店舗を利用してそれを見せる事業にチャレンジしたいと思い、今年の夏休みを目指して、今空き店舗をお借りしました。そこでは毎日夕方からオープンして、子どもたちと一緒にご飯を作って食べて、お勉強を教えてあげたり、地域のおじちゃんおばちゃんが、その子のおじちゃんおばちゃんになってあげて、地域のおばあちゃんがその子のおばあちゃんになってあげて、勉強を教える学生さんがその子のお兄ちゃんおねえちゃんになってあげて、親が返ってきたときには「あんたも食べて行き」って、ご飯を食べて家に帰れるような、そんなホームとしての社会が作り出すもう1つの場所です。
皆様方にパンフレットをお配りしています。その後ろの方に振込用紙があります。もしもここにおられる方で、一緒にこれを実現したいと思われる方がおられたら、是非1,000円でも5,000円でもいくらでも構いません。
資金はおかしな話ですけれども、全くない状況でスタートしました。でもきっと成功すると根拠のない自信を持っています。ですから是非応援していただきたいと思います。
そこに「子ども食堂のため」とチェックマークを付けるところがあります。そこにチェックマークが入っているものはそのために使わせていただきます。特に改修工事のために使わせていただきます。6月15からクラウドファンディングでready forという団体を通してネットでも資金を集め始めますので、よろしくおねがいします。
最後に短い5分の映像を観ていただいて、私の話を終わらせていただきたいと思いますのでしばらくお待ちください。
(ニュース映像)
ナレーション:この日は北九州市内の量販店に譲受に行きました。消費期限をむかえるパンで車のトランクはいっぱいになります。
原田さん:毎日月曜日から金曜日まで、月火水木金来ています
テレビスタッフ:毎日これだけの量が出るんですか?
原田さん:今日は少なかったんですけど、倍の時もあります
ナレーション:どんなにつらい時でも家族で食べ物を囲んだら笑顔がうまれる。
原田さんは常に子どもたちの未来を案じています。
原田さん:将来を担う子どもが生活にゆとりがないということで将来の夢を絶たれてしまうという現状があれば、それをどうにかしないといけない
フードバンクが社会にはなくてはならない当たり前の社会資本として受け入れられるようなそういう存在にならないといけないと思っています
ナレーション:フードバンクから食品が届いた北九州市内の市営住宅です。
少年が笑顔で階段を下りてきました。
テレビスタッフ:今日どう?中を見て
男の子:おいしそう!
テレビスタッフ:何がおいしそう?
男の子:これとこれとこれとこれと・・・・・・全部!
お母さん:よかったね、いっぱいもらったね
この家庭はシングルマザーのBさんが2人の小学生を育てています。
おなかをすかせた子どもたちの手が伸びたのはバナナです。
男の子:うまい!
お母さん:子どもたちは食べるときはすごい食べてですね、フードバンクが来るたびに涙が出るくらいですね、嬉しくて
ナレーション:10年位前に離婚した40代のBさん。養育費は元夫が払う意志がなく、受け取れていません。また病気がちだった親の介護で2年間無職でした。
ある月のBさんの家計は親の年金や子どもたちの児童手当のみで137,000円。毎月必ずかかる支出を差し引くと食費や服を買うお金は15,000円しか残りませんでした。
お母さん:おかずがない時は山に採りに行った、つくしとかツワブキとかを採って食べていた時期もありましたね
ナレーション:子どもたちは野球やサッカーが大好きですが、地域のクラブに入るような経済的な余裕はありません。
お母さん:生活保護の需給を考えたが、兄弟に迷惑がかかってしまうかなと
ナレーション:生活保護を受けると親族に連絡入って迷惑をかけたり、生活に必要なマイカーを持てないなどマイナス面が多いため、悩んだ挙句需給を断念したのです。
何とか家計を切り詰めましたが限界でした。そしてフードバンクに相談したのです。
お母さん:お米をいただいて、大体3回分、8合くらい入ってて、古米なんですけど本当においしいです
お米って大事ですよね、生きる力だから
ナレーション:先月からパートタイムで介護の仕事を始めたBさん。2年ぶりの仕事にはまだ慣れず、料理をする余裕がないと言います。この日の夕食におかずはありませんでした。
男の子:お母さん、良いにおいでおいしいよ
テレビスタッフ:毎日お母さん見ててどう思いますか?
男の子:いつも元気にやっとるよ
でもね、顔見たら大変って書いとる
***** テレビニュース動画は、ここまで *****
私の伝いたいことはこれで終わりたいと思います。ありがとうございました。
フードバンク北九州の新たな取り組み
子どもの貧困の連鎖を断ち切る「もがるか」クラウドファンディング スタート
おなかも心もペコペコな子どもに、地域の家族で暖かい団らんを!
ソーシャルファミリースペースとは?
SFSは、ソーシャルファミリースペース(Social Family Space)の略称です。これは、地域全体で子どもの健全な成長を支える「社会的家族(Social Family)」を実現するための「場所(Space)」という意味を持っています。
子ども食堂や学習支援、多世代交流拠点などの機能が含まれており、2016年にFEDSO(NPO法人福岡県高齢者・障がい者支援機構)が提唱した用語で、誰でも使える一般名詞です。このソーシャルファミリースペース(SFS)の最初の事例となるのが、夏に北九州市で誕生する、この「もがるか」です。
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