トリチウムの生物に対する影響は、1970年頃から研究が進められ、 「許容線量以下でも『染色体』に異常」「遺伝に影響」
「トリチウムの放射能 将来は汚染の主役に」 「低濃度でも染色体異常 放医総合研が突き止める」 といった記事が掲載されていました。
※上記3枚の新聞記事は、山崎 たかとし氏のFBより拝借
東京電力福島第一原発で事故が起きた2011年12月にNHKが放送した『 追跡!真相ファイル 低線量被ばく 揺らぐ国際基準』という番組は、低線量被ばくの危険性を伝える海外取材の中で、放射性トリチウムがもたらした子どもたちの病気について報告しています。
低線量被ばく 揺らぐ国際基準』
2011年12月28日 NHK より抜粋
世界一の原発大国アメリカの3つの原発が集中しているイリノイ州の原発から排出される汚水には放射性トリチウムが含まれていますが、政府は国際基準以下なので影響はないとしてきました。しかし近くの町では、子どもたちがガンなどの難病で亡くなっていました。
原発周辺の地域だけが脳腫瘍や白血病が30%以上増加。中でも小児ガンは、およそ2倍に増えていました。
今アメリカでは原発や核関連施設で働いていた人たちが、相次いで健康被害を訴えています。女性たちは核燃料の再処理施設で、長年清掃の仕事をしていました。身体に異変が起きたのは、仕事を辞めて暫く経ってからのことでした。
「乳がんと喉頭がん、そして顔に皮膚がんを患っています」(元労働者)
健康への被害はないと信じて働いてきた女性たち。今、国に補償を求める訴えを起こしています。「私たちはモルモットでした。どんなに危険か知らされていませんでした」
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10月、アメリカでICRPの会議が開かれました。ICRPはおよそ30カ国250人の科学者や政府関係者でつくるネットワークです。会議の一部だけが音声での取材を許可されました。
福島第一原発での事故を受けて低線量被曝のリスクの見直しを求める意見が相次ぎました。
「8歳や10歳の子どもがなぜ原発労働者と同じ基準なのか。福島の母親や子どもたちは心配している」「ICRPの低線量リスクがこのままでいいのか大きな疑問が持ち上がっている」(会議での発言)
ICRPは低線量のリスクをどう見直そうとしているのか、カナダのオタワにある本部に直接聞くことにしました。事務局長のクリストファー・クレメント氏です。既に作業部会を作り、議論を始めているといいます。
「問題は低線量のリスクをどうするかです」
クレメント氏は私たちに驚くべき事実を語りました。これまでICRPでは低線量の被曝のリスクは低いと見なし、半分にとどめてきたというのです。
「低線量のリスクを半分にしていることが本当に妥当なのか議論している」
「この問題は何度も議論されてきた。なぜ引き上げなかったのかは、私が委員になる前の事なので詳細はわからない」(クレメント氏)
なぜ低線量のリスクを引き上げなかったのか。私たちは議論に関わったICRPの元委員に取材することにしました。調べてみると、ある事実がわかりました。当時の主要メンバーは17人。そのうち13人が核開発や原子力政策を担う官庁とその研究所の出身者だったのです。
その一人、チャールズ・マインホールド氏。アメリカ・エネルギー省で核関連施設の安全対策に当たっていた人物です。電話での交渉を重ねて、ようやく私たちの取材に応じました。
ICRP名誉委員チャールズ・マインホールド氏。1970年代から90年代半ばまでICRPの基準作りに携わってきました。低線量のリスクを引き上げなかった背景には、原発や核関連施設への配慮があったといいます。
「原発や核施設は、労働者の基準を甘くしてほしいと訴えていた。その立場はエネルギー省も同じだった。基準が厳しくなれば、各施設の運転に支障が出ないか心配していたのだ」(マインホールド氏談)
マインホールド氏は自らも作成に関わったというエネルギー省の内部文書を取り出しました。1990年、ICRPへの要望をまとめた報告書です。低線量のリスクが引き上げられれば、対策に莫大なコストがかかると試算し、懸念を示していました。マインホールド氏はアメリカの他の委員と協力し、リスクの引き上げに強く抵抗したと言います。
「アメリカの委員が低線量では逆に引き下げるべきだと主張したのだ。低線量のリスクを引き上げようとする委員に抵抗するためだった」
その後ICRPは、原発などで働く労働者のために特別な基準を作ります。半分のまま据え置かれていた低線量のリスクをさらに20%引き下げ、労働者がより多くの被曝を許容できるようにしたのです。
「労働者に子どもや高齢者はいないので、リスクは下げても良いと判断した。科学的根拠はなかったが、ICRPの判断で決めたのだ」(マインホールド氏談)
※番組全部の書起しはコチラ
■科学技術社会論研究 第 20 号(2022)
中川保雄『放射線被曝の歴史』の研究過程
( 田井中雅人 )より抜粋
要 旨
『放射線被曝の歴史』を著した神戸大教授・中川保雄(1943―91)は,広島・長崎への原爆攻撃による「効 果」を調査したアメリカ軍合同調査委員会と原爆傷害調査委員会(ABCC)が,爆心地から 2 キロ以遠の様々 な症例を被曝の急性症状から切り捨てるなど,恣意的な基準をつくって放射線被害の過小評価を定着させ たことを突き止め,それはアメリカの原爆投下を正当化するためだったと論じた.
「マンハッタン計画」にあたった科学者たちは,「耐容線量」に替えて「許容線量」の概念を打ち出し, 遺伝学者の懸念や世界的な反核世論を抑え込んだ.
放射線被曝防護をめぐる「国際的基準」について,中川は「核・原子力開発のためにヒバクを強制する 側が,それを強制される側に,ヒバクがやむをえないもので,我慢して受忍すべきものと思わせるために, 科学的装いを凝らして作った社会的基準であり,原子力開発の推進策を政治的・経済的に支える行政的手 段なのである」と看破していた.福島原発事故後もそうした基準の押しつけが続いており,中川の研究の 今日的意義が再評価されるべきである.
1960 年代に入って原発安全論争が高まる中,スチュアートやゴフマン,バーテルらによるICRPの許容線量に対する批判が高まった.1970 年代にはマンキューソによるハンフォードの原子力施設の労働者のがんや白血病の多発が明らかになった.
ICRPは 1977 年勧告で,許容線量に代えて「実効線量等量」という概念を導入し,とりわけ,体内被曝の大幅な過小評価を進めた12).線量は「合理的に達成できる限り低く(as low as reasonably achievable: ALARA)」すればよいと,さらに緩和された.さらに「コスト・ベネフィット論」を導入して,放射線被曝管理に公然と金勘定が持ち込まれた.
ここに至って中川は,原子力産業を「ヒバクの死の商人」と呼び,「人々に被曝を強制したうえに,被害が現れると,自分たちで過小評価しておいた放射線のリスク評価を用いて,「科学的」には因果関係が証明されないからその被害は原発の放射能が原因ではない,と被害者を斬り捨てる」と激しく批判した(中川 2011, 152―9).
5.おわりに
中川は遺著『放射線被曝の歴史』において,放射線被曝の過小評価のそもそもの始まりはアメリ カのマンハッタン計画と広島・長崎への原爆投下の正当化であり,それまでの放射線健康影響のあり方をまったく一新するもので,それは国家の軍事目的に奉仕する科学だったと論じた.
遺伝的影響を認めざるをえないことから打ち出した「許容線量」をできるだけ高く定めるという目標に沿っ て研究成果が組み上げられ,1950 年代の核実験反対運動に応答しつつ,1958 年前後に放射線防護 の基準が固められる.
アメリカでできた枠組みが,ICRPなどによって国際的に定着し,60 年代か ら 70 年代にかけて原発による産業利用に沿ったリスク論,コスト論が練り上げられていったという全体像を示した.
その思考が深まっていく過程には,原子力産業と対峙したバーテル,ゴフマン, マンキューソ,スチュアートといった米英の第一線の研究者らとの知の交流と共闘があった.
中川の没後 30 年,福島原発事故から 10 年.
事故前の一般人の線量限度は年間 1 ミリシーベル トだったが,日本政府はICRP勧告を参考に,避難指示基準を年間 20 ミリシーベルトとしたまま, 避難民の福島への帰還政策を進めている.福島では 200 人以上が小児甲状腺がんと診断されてい るが,原発事故の放射線被曝による健康影響は考えにくいとしている.
※全文はコチラ
(2023年7月20日 OurPlanet-TV)より抜粋
東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が7月20日、福島市内で開かれ、新たに14人が甲状腺がんの疑いがあると診断された。これまでに、悪性疑いと診断された子どもは316人となり、がん登録で把握された2018年までの集計外の患者43人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもの甲状腺がんは、術後に良性だった一人を除き358人となった。
原発処理水の放出にお墨付き…IAEAは本当に「中立」か 日本は巨額の分担金、電力業界も人員派遣
(2023年7月8日 東京新聞) より抜粋
東京電力福島第一原発で生じる汚染水。浄化処理後に海洋放出する計画に関し、国際原子力機関(IAEA)がお墨付きを出した。これに続き、日本の原子力規制委員会も関連設備の使用前検査で終了証を出したが、そもそもIAEAはどこまで信を置けるのか。かねて日本政府は、IAEAに巨額の分担金や拠出金を支出してきた。IAEAのお墨付きは、中立的な立場から出たと受け止めるべきか。
◆巨額な拠出金 日本の分担率は「10%超」
外務省のサイトによると、IAEAの資金は各国の義務的分担・拠出金と任意拠出金で賄われている。
外交青書によれば、20年度の外務省の拠出総額は約63億円。総務省のサイトで公表される「政策評価等の実施状況及びこれらの結果の政策への反映状況に関する報告」のうち、15年度分を見ていくと、日本の分担率は10%を超えるとあり、「加盟国中第2位」と記されていた。
◆「職員をたくさん送り、存在感を確保する」
外務省以外にも本年度当初予算では、原子力規制委員会事務局の原子力規制庁が約2億9000万円、文部科学省が約8000万円、経済産業省が約4億4000万円、環境省が約3000万円を拠出金として計上した。
原子力規制庁は職員9人を派遣見込みで、人件費などが拠出金に含まれる。3人を派遣する経産省の担当者は「原発のない国が原発を導入するための支援や廃炉支援をしている」と説明する。
総務省のサイトにある前出の「政策評価等の実施状況(後略)」によれば、日本政府の「貢献」は「原子力先進国としてプレゼンスや開発途上国への影響力・発信力を確保」することに寄与しているという。「プレゼンス」は存在感のことだ。
◆被災者からの疑問
日本政府は巨額の費用を投じたIAEAに海洋放出計画の評価を依頼し、報告書を受け取った。 被災者団体「原発事故被害者相双の会」の国分富夫氏(78)=福島県相馬市=は「IAEAは加盟国に原発推進の国が少なくない上、日本からいくらも受け取るとなれば、中立な評価を下せるのか」といぶかしむ。
海洋放出計画へのお墨付きを巡っては、「日本だけではなく、原発を保有する加盟国の事情が影響したのでは」とみる向きもある。
海洋放出の焦点の一つがトリチウムだ。汚染水をALPSで処理しても除去できないため、放出の是非が議論されてきた。
◆トリチウム処分「海洋放出は安上り」
このトリチウム、かねて世界の原発でも生じ、海洋や河川に放出されてきた。国分氏は「IAEAが福島でトリチウムの海洋放出に『待った』をかけると、世界の原発でトリチウムの放出に『待った』がかかる。原発を稼働させる国はトリチウムの処分に困ることになる。裏を返せば原発が稼働できなくなる」と見立て、今回の海洋放出計画に対するお墨付きを「原発推進派による茶番劇」と話す。
元駐スイス大使で、地球システム・倫理学会常任理事の村田光平氏は「IAEAについて無視できないのは電力業界からの人員派遣。利益代表の側面があるのではないか」と述べる。
ジャーナリストの政野淳子氏は「トリチウムの処分法として海洋放出は安く上がる。IAEAはそれを認めた形」と指摘する。
原子炉建屋に地下水などが入り込む状況に触れた上で「いまのままでは、汚染水は増え続ける。IAEAが第三者の中立機関として科学的に評価するなら、汚染水の恒久的な止水策を提言しているはずだ」と語気を強める。
◆規制委を「独立」と評価するが…
微妙な立ち位置のIAEA。今回の報告書も首をかしげたくなる記述がある。お目付け役とも言える日本政府に高い評価を与えたが、うのみにはできない。 たとえば「原子力規制委員会は独立した規制機関」という部分。規制委事務局の規制庁は昨年7月の人事異動で、長官と次長、原子力規制技監のトップ3に原発を推す経産省の出身者が就いた。
原発の60年超運転を可能にする法制度の見直しを巡っても、規制庁と経産省の担当者が水面下で面談。経産省側が規制委側に条文案を提示していた。
※全文はコチラ
玄海原発と白血病死亡率の因果関係
原発稼働後、約6倍に増加
驚愕の数値、専門機関による詳細な調査が必要
(2019年3月5日 壱岐新報)より抜粋
玄海原子力発電所と原発周辺自治体との白血病死亡率増加について、原発と白血病発症についての因果関係を調べている魚住昭三弁護士(長崎市)と、市防災士会の辻樹夫会長が公表した資料から、本市における白血病死亡率の詳細な推移がわかった。
資料は昭和44年から始まるデータを記載し、5年ごとの白血病死亡率をまとめたもの。対10万人数の白血病死亡率は、玄海原発稼働前と後とでは6から7倍に増加しているという驚愕の数値が並ぶ。また原発周辺自治体も同様に、昭和50年の玄海原発1号機の稼働開始以降から死亡率増加を示す推移を示している。
各県保健部局が毎年発行している衛生統計年報(人口動態編)を引用した資料によれば、玄海原発1号機が稼働する以前の昭和44年から昭和52年までの期間は、本市における対10万人数の白血病死亡率は約3.6人と、同期間の全国平均3.5人とほぼ同じ数値となっている。
しかし昭和50年に玄海原発1号機が稼働を始め、その6年後の昭和56年に2号機が稼働開始、平成6年に3号機、平成9年に4号機が稼働を開始するに従い、白血病死亡率は増加の一途をたどっている。平成9年から平成23年までの期間は、全国平均5.7人に対して、本市は26.2人にも及ぶ。
玄海原発は白血病を誘発すると言われるトリチウムを放出する。放出量は全国にある他原発の中で最も多く、稼働開始から現在に至るまで大気中や海洋中に放出され続けている。トリチウムは放射能を含んでいると言われ、全ての原発や核燃料再処理施設では回収されず、自然環境に垂れ流しの状況から、世界中でも深刻な問題となっている。
本市は玄海原発の対岸にあり、島の周囲は海で囲まれているため、海洋に流されたトリチウムを周囲の海洋生物を介して、住民が食事などで摂取している可能性は高い。
一方で県北部の白血病率の高さは、ウイルス性による風土病とされている。特に長崎県はウイルスキャリアが多いことから、玄海原発1号機稼働開始前から発症の割合は全国平均よりも高い。昭和44年から49年の全国平均3.5人に対し、本市は3.9人とわずかな差であり、他の県北部自治体も同様の数値だ。
しかし平成9年以降は全国平均から6倍近い明らかな差が生じている。
※全文はコチラ
将来の子ども達のために調査を ( 2019.2.26 壱岐新報)
高い白血病死亡率、玄海原発の影響か(2019.2.20 壱岐新報)
身体への影響は皆無なのか(2019.2.20 壱岐新報) より抜粋
玄海原発と白血病に関する研究を進めている、元純真短期大学講師で医学博士の森永徹氏の研究資料とシンポジウムでの発表は興味深い。内容には、玄海原発30㌔圏内を有する本市にとって、聞き流すことができない重要な情報が含まれている。
これまで唐津市などの原発周辺では、玄海原発の稼働差し止めを求める訴訟が起き、原告側は差し止めを求める理由の一つとして玄海町とその周辺での白血病による死亡の増加を挙げている。対して九電側は白血病の増加は高齢化によるものであると反論し、他にもその地域で昔から風土病といわれる成人T細胞白血病を原因とする意見をあげている。またこの風土病は西日本に多いことも理由にする。一方で森永氏は、成人T細胞白血病、すなわち風土病について、科学的に検討したものは一つも見当たらないとして独自に検討を進めてきた。
玄海原発からの距離と白血病死亡率の変化で、佐賀県内20自治体ごとの原発稼働前(昭和44年~昭和51年)と稼働後(平成13年~平成24年)の年平均白血病死亡率(人口10万対)と、玄海原発から各自治体までの距離の関連を調べた結果、玄海原発に4・1㌔近づく毎に10万人当たり1人、白血病死亡率が増加するというものとなった。また、昭和50年の稼動前と後との比較では、4倍以上の増加率になっている。
また放射性物質の放出になるトリチウム(放射性水素)は、体内に入ると白血病を誘発するとされる。玄海原発は全原発の中で最もトリチウムの放出量が多く、全国1位だ。
トリチウムは自然界にも存在し、新陳代謝で体外排出されるといわれている。しかしタンパク質や脂肪に取り込まれた有機物結合型トリチウムは排出までに長い年月がかかる。さらに海に放出された水から、魚介類などを介して生物濃縮され、食物連鎖で私たちの体内に入るようになる。いわば内部被曝のようになる。この流れから白血病を誘発している可能性は否定できない。
森永氏は、「玄海原発が全国一トリチウムの放出量が多いこと、トリチウムは原発周辺の海水、大気、水産物を汚染すること、動物実験ではトリチウムは白血病を誘発する傾向があること、同じ原発立地自治体でもトリチウム高放出と低放出原発立地自治体の住民の間には、白血病死亡率に統計学的有意差がある」ことから、玄海原発周辺の白血病の多発の要因は、玄海原発から放出されるトリチウム以外には考えられないと示唆している。
玄海原発と白血病
森永 徹(元純真短期大学・健康科学)
玄海原発と白血病 福岡核問題研究会 2015年3月7日 九州大学 スライドより抜粋
※ 森永氏の講演は壱岐市の新聞記事の前で壱岐市のデータは入っていません。
元原発技術者が「放射性トリチウム汚染水を薄めて海洋放出する」方針を批判
(2018.09.02 ハーバービジネスオンライン)より抜粋
「置き場がなく、海洋放出しかない」と急ぐ政府
「薄めて基準値以下にすれば海洋放出できる」と原子力規制委員会
トリチウム汚染水の海洋放出に異を唱える、元原発技術者の後藤政志さん 東京電力福島第1原発でたまり続けている放射性トリチウムなどを含んだ大量の汚染水。原子力規制委員会は、この汚染水を「海洋放出が唯一の選択肢」として、年内放出への決断を迫っている。
8月30日に開催された福島県富岡町の公聴会では、漁業関係者を中心に「福島県の漁業に壊滅的な打撃を与える」などと海洋放出に反対する声が相次いだ。
その公聴会の前日に行われた緊急学習会では、元東芝・原発技術者の後藤政志氏が「トリチウム汚染水を大型タンクに100年以上備蓄し、線量が減衰するまで保管する方法が現実的だ」と訴えた。人や環境に対する危険性についてさなざまな見解があるが、必ずしも安全が確認できていないのがトリチウムという放射性物質だ。
しかしこの大型タンク案に対し、東京電力は「汚染水を貯蔵する敷地が足りなくなる」とも主張、検討するにも至っていない。
「基準値以下」のトリチウム水を流す米国イリノイ州では、原発周辺に暮らす住民の脳腫瘍や白血病が30%以上増え、小児がんは約2倍に増えたとの報告がある。それでも経済産業省は「トリチウムは人体への影響がセシウムの700分の1で、海外でも放出しており安全」だとし、原子力規制員会は「薄めて告示濃度以下にすれば放出できる」という立場をとっている。
「置き場がなく、海洋放出しかない」と急ぐ政府
後藤氏は、この見解について異を唱える。 「トリチウムの安全性はまだ確認できていません。光合成によって有機結合型トリチウムになるとさらに危険性が高まります。さらに放射性物質による汚染から海洋環境を守るとした『ロンドン条約』違反でもあります。
いくら薄めた(基準値以下にした)としても、日常的に放出される分に加えて備蓄された1000兆ベクレルが海へ投棄されるとなると、総量の問題も出てきます。
そのため放射線量が1000分の1に減衰する123年間、大型タンクに保管しておくのが妥当。その大型タンクの技術はすでにある。2021年までの133万トンは、原発敷地のスペースで全て保管することも可能です」(後藤氏)
後藤氏はもともと海底石油開発などの特殊船舶・海洋構造物の設計技師で、石油備蓄タンクの実例をもとに検討した。 「足りなければ、7号機8号機建設予定地もある。洋上タンク方式をとれば133万トンの容量は大した量ではない。確かに予算的には海洋放出が34億円と最も安価ですが、他の地下埋設2500億円といった経産省案と比べると、大型タンク案は330億円と妥当な額です。これを無視して海洋放出するなどあり得ない」(後藤氏)
経産省が放出をもくろむ福島原発トリチウム水の危険性
(2018/10/01 女性自身)より抜粋
放射線治療の第一人者で、北海道がんセンター・名誉院長の西尾正道医師は、こうした政府の安全神話に警鐘を鳴らす一人だ。
「トリチウムは体内でたんぱく質や脂質などの有機物と結合し、有機トリチウムになると細胞の核に取り込まれDNAを損傷。健康被害が生じる可能性があります。カナダでは、トリチウムを大量に放出するピッカリング原発の周辺で、小児白血病やダウン症候群などの増加が実証されています」
<参考資料>日本の発電用原子炉トリチウム放出量
2002年~2012年度実績(2015.3.27 inaco)より抜粋
原子力施設運転管理年報24年度版・25年度版に掲載されている日本の商業用原子炉(実験炉・原型炉を含む)から放出されている液体の形でのトリチウム放出量である。各事業者が計測した数字をそのまま掲載したものだが、加圧水型原子炉の放出量には驚かされる。
特に九州電力玄海原発の放出量は、カナダの重水炉CANDU型原子炉の放出量に匹敵する。これで付近住民に健康被害が出ていないと考える方がおかしい。
『トリチウムの健康被害について』
( 2018年12月11日 市民のためのがん治療の会)より抜粋
トリチウムの人体影響
最も有名な報告はドイツとカナダからの報告です。ドイツでは1992年と1998年の2度行われたKiKK調査が有名です。この調査はドイツの原子力発電所周辺のがんと白血病の増加に関する調査です。 その結果は、原子力施設周辺5km以内の5歳以下の子供には明らかに影響があり、白血病の相対危険度が5km以遠に比べて2.19、ほかの固形がん発病の相対危険度は1.61と報告され、原発からの距離が遠くなると発病率は下がったという結果です。
カナダの重水炉というトリチウムを多く出すタイプのCANDU原子炉では稼働後しばらくして住民が実感として健康被害が随分増えていると騒ぎ出しました。 調査した結果やはり健康被害が増加していました。 カナダ・ピッカリング重水原子炉周辺都市では小児白血病や新生児死亡率が増加し、またダウン症候群が80%も増加していました。
さらにイギリスのセラフィールド再処理工場の周辺地域の子供たちの小児白血病の増加に関して、サザンプトン大学のガードナー教授は原因核種としてトリチウムとプルトニウムが関与していると報告しています。
日本国内でも同様な報告があり、全国一トリチウムの放出量が多い玄海原発での調査・研究により、森永徹氏は玄海原発の稼働後に玄海町と唐津市での白血病の有意な増加を報告しています。 同じ原発立地自治体でもトリチウム高放出の加圧水型原子炉と低放出の沸騰水型原子炉の原発立地自治体の住民の間には白血病死亡率に統計学的有意差があることなどから、 玄海町における白血病死亡率の上昇は玄海原発から放出されるトリチウムの関与が強く示唆されるのです。
北海道の泊原発周辺でも稼働後にがん死亡率の増加が観察されています。 泊村と隣町の岩内町のがん死亡率は泊原発が稼働する前は道内180市町村の中で22番目と72番目でしたが、原発稼働後は道内で一位が泊村、二位が岩内町になりました。
なおマウスの実験では、トリチウムの単回投与より同じ量の分割投与の方が白血病の発症が大幅に高かったとする報告もあるが、原発周辺住民のトリチウム被曝は持続的であり、まさに分割投与です。 さらに原発からの距離が近いほど大気中のトリチウム濃度が高いことも分かっています。色々な報告で小児白血病が多いことが共通していますが、小児の白血病の多くは急性リンパ性白血病です。 放射線が白血球の中で最も放射線感受性の高いリンパ球に影響を与え、リンパ性白血病を発症させてもおかしくないのです。
こうしたトリチウムの危険性を知っている小柴昌俊氏(ノーベル物理学者)と長谷川晃氏(マックスウエル賞受賞者)は連名で、 2003年3月10日付で「良識ある専門知識を持つ物理学者として、トリチウムを燃料とする核融合は極めて危険で、中止してほしい」と当時の総理大臣小泉純一郎宛てに『嘆願書』を出しています。
※全文はコチラ
「証拠のないことは、ないことの証拠ではない」─トリチウムの生物への影響:ティモシー・ムソー教授の論文レビュー
( 2023年6月15日 グリーンピース・ジャパン)より抜粋
2023年4月、ティモシ―・ムソー教授は、トリチウムに関連する科学文献約70万件を調査し、トリチウムが人体などに及ぼす生物学的影響を扱った約250件の研究を分析して、文献レビューをまとめました。
分析の結果、大部分の論文は、トリチウムによる被ばく、特に内部被ばくがDNAの損傷、生理機能と発達の障害、生殖能力と寿命の低下、ガンなどの病気のリスク上昇といった、重大な影響をもたらす可能性を示していました。
多くの論文が、DNAの一本鎖および二本鎖切断、優性致死突然変異の増加、あらゆる種類の染色体異常、遺伝的組換えの誘発などを報告していました。トリチウムは遺伝毒性と発がん性を有しており、生殖系にも生物学的な影響を及ぼす恐れがあるとみられています。
また、トリチウムの生物学的効果比(RBE)*1は、セシウムより2倍~6倍高いことが多くの論文で確認されました。トリチウムの高いRBEは、DNAのクラスター損傷*2を増加させます。トリチウムは普通の水素原子の代わりに水分子に組み込まれ、体内にも容易に入ります。生物体内に入れば、セシウムなどガンマ線核種の倍以上も危険ということです。
トリチウムがベータ線放出核種で「弱い放射性物質」という考え方は、外部被ばくにのみ適用されるものです。トリチウムが摂取され有機物に取り込まれて、有機結合型トリチウム(OBT)として濃縮された場合、内部被ばくはさらに大きくなります。
※全文はコチラ
トリチウム汚染水 海洋放出問題 資料集
「原子力市民委員会 原子力規制部会まとめ」より抜粋
Q2: 人体への悪影響を指摘する意見と根拠は?
Aa: 河田昌東(分子生物学と環境科学の専門家)
〇 トリチウム水は普通の水と同様、口や呼吸、皮膚を通じて体内に入り、細胞中で様々な合成・代謝反応に関与し、水素と同様に蛋白質や遺伝子 DNA の構成成分になる。
体内の有機物に取り込まれたトリチウムは「有機結合性トリチウム:OBT(Organic Bound Tritium)」と呼ばれ、その分子が分解されるまで細胞内に長期間とどまり、ベータ線を出し続けて内部被曝をもたらす。
放射線生物学者ロザリー・バーテルによれば、DNA の一部になった有機結合性トリチウムの体内残留期間は少なくとも 15 年以上とのことで、体内に入っても短期間に排出されるというのは間違いである。
しかも、その間、ベータ線による内部被曝が続く。さらにDNAに取り込まれた有機結合性トリチウムは。放射線被曝とは全く異なる仕組みでDNA をも破壊する。トリチウムはベータ線を出して崩壊するとヘリウムに変わる。ヘリウムは安定元素で他の元素と化学結合できないため、トリチウムがヘリウムに変わった途端 DNA との結合が切れてしまう。
その結果、DNA を構成している炭素や酸素、リンなどのトリチウムと結合していた元素が不安定になり DNA が壊れる。これは放射線被曝とは全く異なる DNA 分子の破壊である。
〇トリチウムの生物への影響については多くの研究がある。
・人間のリンパ球の培養実験では、DNA の構成要素のひとつチミジンの水素をトリチウムで置き換えると、トリチウム濃度が 37Bq/ml くらいから染色体異常が始まり、19 万 Bq/ml では 100%の染色体が破壊される。
・ローレンス・リバモア国立核研究所(米)による長期間のトリチウム投与実験では、雌のリスザルに妊娠から出産までトリチウム水を飲ませると、生まれた子どもの雌の卵巣には卵細胞が殆どなかった。
〇現場被害の報告
・イギリスのセヴァーン河口(ヒンクレーポイントとバークレイ・オルドベリ原発からの排水にトリチウム、ニコムド・アマーシャム放射化学実験所からの排水に様々な有機物が含まれている):海水のトリチウム濃度は 10Bq/ml。海底の表層土壌には 600Bq/g、海藻には 2000Bq/g (いずれも乾燥重量当たり) のトリチウムが含まれ、その殆どは有機結合性トリチウムであった。(2010 年の論文)
・カナダのオンタリオ湖周辺 (CANDU 型原発 8 基あり):周辺地域で出産異常や流死産、ダウン症候群の増加、新生児の心臓疾患や中枢神経の異常の増加(1978~1985 年、シエラ・クラブ・カナダの論文)新生児に影響が大きい理由は、トリチウム水が母親の胎盤を透過して胎児の DNA に入り込み、盛んに分裂しつつある胎児の DNA を破壊するから。
Ab: 上澤千尋 (原子力資料情報室)
・体内摂取による内部被ばくが懸念される。トリチウム水として人体に取り込まれた場合、その一部が細胞核の中まで入り込んで、DNA(遺伝子)を構成する水素と置きかわる可能性がある。その場合には、トリチウムが放出する、エネルギーが低く飛ぶ距離が短いベータ線が、遺伝子を傷つけるのに非常に効果的に作用し、ガンマ線よりも危険性が高いとみるべきではないかと指摘する研究もある。ベータ線の生物学的効果比(ガンマ線に対する相対的危険度)を 1.5~5 にすべきとの指摘もある。
・有機トリチウムとしてふるまう場合にはもっと重大だと考えられている。トリチウムが有機化合物の中に入った形になると、人体にも吸収されやすく、細胞核の中にも入り込みやすくなり、長期間にわたりとどまると考えられる。
・カナダの CANDU 炉が集中立地する地域の周辺で、子どもたちに異常が起きていることが1988年に市民グループによって明らかにされた。これを受けてカナダ原子力委員会がまとめた 1991 年の報告書(AECD報告 INFO-0401 と INFO-0300-2)では、結論こそちがうが、データとして遺伝障害、新生児死亡、小児白血病の増加が認められる。
Ac: 馬田敏幸(産業医科大学・アイソトープ研究センター)
・ トリチウムの被曝の形態は、低線量・低線量率の内部被ばくが想定されるが、経口・吸入・皮膚吸収により体内に取り込まれたトリチウム水は、全身均一に分布することから影響は小さくないと考えられる。さらに有機結合型トリチウムは生体構成分子として体内に蓄積され、長期被ばくを生じるので、トリチウムの化学形の考慮は重要となる。
Ad: 丸茂克美(富山大学大学院理工学研究部)
1990~92 年にカナダのトロント大学に籍を置いていたが、当時は地元のマスコミがオンタリオ湖岸のピッカリング原子力発電所による環境汚染問題を取り上げていた。発電所周辺の子供に遺伝障害や新生児死亡、小児白血病の増加が認められるというものである。
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Af: 崎山比早子 (元放射線医学総合研究所主任研究員、高木学校)
〇 トリチウムの生体影響について 2020 年 2 月に発表された ALPS 小委員会の「報告」https://www.meti.go.jp/…/takakusyu/pdf/018_00_01.pdfでは トリチウムの生体影響が以下の①~④に述べるように正しく評価されていない。
① 「報告」p.16 に 「・・・100mSv を下回ると統計的に有意な 増加は見られなくなる(自然発生頻度の変動の範囲内となる)」 とあるが、これは明らかに間違いである。2012 年以後、数ミリシーベルトでも小児白血病その他の悪性腫瘍の増加を示す論文が多数発表されており、NCRP コメンタリー27 等でも評価されている。ICRP も NCRP も放射線防護のためには「LNT モデルよりも実用的で賢明なモデルは他に存在しない」としている。これに則って考えれば被ばくは少なければ少ないほどよいので、現在管理下にある汚染水中の放射能を故意に環境に放出して被ばくの機会を増加させることは許されない。
② p.16 で 「DNA には普段から様々な原因で損傷が入っていて、その大半は速やかに修復されている。」 と述べているが、放射線による損傷と自然発生する損傷では質が異なる。放射線による損傷は複雑損傷が多く、誤修復が起きやすい。従ってそれが発がんの原因になり得る。発がん要因の中で放射線ほどよく研究されているものはなく、その成果が LNT モデルなのである。
③ トリチウムの生物学的効果比(RBE)「トリチウムが他の放射線や核種と比べて特別に生体影響が大きいという事実は認められていない」と述べているが、これは正しくない。UNSCEAR 2016 では HTO(トリチウム)の RBE を調べた 48 報の論文をまとめており、γ 線を 1 とすると HTO の RBE は 2−2.5 と述べている。また線量が低いほど RBE が高くなる傾向があるとも述べている。
2016 年に青森で行われた環境科学研究所と ICRP の合同シンポジウムで ICRP の Real A 氏が発表したデータによると、多くの実験で RBE は 2〜3 であることを示しており、1 を示すものはほとんどない。
「報告書」はHTO の RBE を 1 としているので、危険性を 1/2〜1/3 に見積もっていることになる。これらの事実は、仮に海洋放出をするとしたら、現在の希釈倍数よりも 2 倍〜3 倍多く希釈しなければならないことを示しているので80 年〜120 年かかることになり陸上保管で放射能が 1/1000 に減衰する期間とそれ程変わらなくなる。
④ 有機結合型トリチウム(OBT)の危険性
HTO は皮膚、呼吸、飲料水、食物などから体内に取り込まれ血液に移行し、容易に有機結合型トリチウムOBT1(交換可能な OBT)あるいは OBT2(交換不能な OBT)に変換される。HTO の体内半減期は 10 日と言われているが、OBT1 と OBT2 のそれは、それぞれ 30〜40 日と 140〜550 日と報告されており、OBT のRBE は HTO の 4〜5 倍となる (ALPS 小委員会の「報告書」では 2〜5 倍)。 トリチウムの生体影響を総合して考えるとγ線と同等とする計算は著しい過小評価となる。
〇 トリチウムは DNA に蓄積される
放射線による損傷の内、生体にとって最も深刻なのは DNA 損傷である。トリチウムが DNA に取り込まれ、それが長く存在し続ければその影響は大きい。DNA の中に取り込まれたトリチウムはタンパク質、炭水化物、脂肪などに入ったものとは異なり代謝によって減衰せず、DNA の中に長くとどまっている。
しかも DNA の半減期は長く、マウスの肝細胞、脳細胞ではそれぞれ約 1 年、約 2 年(マウスの寿命は約 3 年)とする報告がある。最も危険に晒されるのは分裂するときにHTO に曝露され、その後長く生きる細胞、例えば胎児の神経細胞や卵子である。
卵子 DNA に取り込まれたトリチウムは次世代にも引き継がれてゆく可能性がある。トリチウムのβ線の飛程距離は 0.5〜0.7μm と短いにしても、DNA 中に存在すれば DNA 損傷は容易に起きる。
〇 トリチウムの生体影響の報告
ALPS 小委員会報告では UNSCEAR 2016 年報告のまとめとして「ヒトの健康に対するトリチウム被ばくの確率的影響に関する疫学的証拠は存在しない」としているが、これは以下に挙げるように正しくない。
人、特に胎児や子どもに対する健康影響を過小評価ないしは無視して ALPS汚染水を環境放出することは許されるものではない。
カナダの CANDU 型原子炉はトリチウムを環境中に多く排出し、その周辺に小児白血病や先天性異常が増加しているという報告は 2016 年の UNSCEAR にもとりあげられている。特に Pickering 原発の HTO 放出は多く、原発から 25km 以内で先天異常、死産、新生児死亡率の増加が報告されている。
ドイツの KKiK 調査(2008 年)では原発から 5km 以内の 5 才未満の子どもの白血病やがんがそれ以遠の地域におけるよりも増加していると報告されている。その原因は原発から排出されるHTOや 14Cのためと考えられている。
2018 年にはトリチウム被ばくした核施設労働者の染色体異常が、被ばくのない労働者に比較して約 3 倍多いという報告がされている。
〇 ALPS 処理水の海洋放出による海産物の汚染
ALPS 処理水を海洋放出することによって最も汚染が心配されるのは海産物である。HTO で汚染された海水中で育った海産物中にはOBTが蓄積される。OBTはHTOよりも摂取したときに生体内のタンパク質やDNAに取り込まれやすく排出されにくいので、生体影響も大きくなる。
UNSCEAR 2016 によるとカナダの CANDU 型原発では冷却水に重水を使っているため HTO の排出量が多い。しかも排水を五大湖に流しているので原発近くの湖水は HTO 含量が高い。そこに住む魚は他のバックグランド地域の魚に比べて HTO 活性は 5 倍以上あるという。
イギリスの Bristol 海峡河口での調査結果によると海水のトリチウム濃度が 10Bq/L の地域で採取された海藻、ムール貝、カレイの乾燥重量当たりのトリチウムはそれぞれ 6x102Bq/kg、2x103Bq/kg, 105Bq/kg と報告されている。
東電福島第一原発サイトから、希釈するとはいえ持続的に HTO を放出し続ければ、近海の海産物に取り込まれる。しかも HTO はセシウムと違い計測が難しく市民が簡単に測れないので大きな不安材料となる。
カナダの原子力規制庁から出版された 2006 年報告によると、原発周辺の土壌、井戸水、野菜、果物、牛乳等は HTO 及び OBT の両者に汚染されており、汚染の程度は原発に近いほど高い。1000km 以上離れると数 Bq/L であるのに比較して 1km 地点では数千 Bq/L となる。
UNSCEAR 2016 にはマヤーク核施設からの距離と住民の尿中トリチウム量が、核施設からの距離と逆相関を示すという調査が紹介されている。
このように、汚染源に近い地域はその影響を受けやすい。従って福島県の漁民はまたもや最も損害を受けることになる。
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原子力百科事典 ATOMICA 有機結合型トリチウム有機結合型トリチウム ゆうきけつごうがたとりちうむ Organically Bound Tritium、OBT 植物中に取り込まれたトリチウム水は、光合成により有機化されると、葉、実および根などに蓄積される。このように組織と結合したトリチウムは有機結合型トリチウムと呼ばれる。光合成による有機結合型トリチウムの生成は、植物の種類や成長の段階によって異なる。有機結合型トリチウムには、組織内に存在する自由水(組織自由水)と容易に交換可能な交換型トリチウムと有機物の炭素と強く結合している非交換型トリチウムの2種類がある。国際放射線防護委員会(ICRP)が提示しているトリチウムの化学形別の線量係数(Sv/Bq)、すなわち単位摂取放射能当たりの実効線量では、吸入および経口摂取のいずれの場合もトリチウム水(HTO)の線量係数は、トリチウムガス(HT)の10000倍となっている。植物等の組織と結合した有機結合型トリチウム(OBT)の線量係数はトリチウム水(HTO)のさらに約2.3倍である。環境中でトリチウム移行に関与するさまざまなプロセスには、拡散、沈着、再放出、HTのHTOへの変換、HTOの有機形トリチウム(OBT)への変換などがある。 |
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