新潟県は2月5日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動を巡り、福島第一原発事故による健康影響を検証する「健康分科会」の第2回会合を開いた。福島県が行っている「県民健康調査」や甲状腺がんについて、委員の意見が対立。新潟大学の中村和利委員は、福島での検診をめぐり、「過剰診断」や「検査の不利益」といった議論があることを指摘。これに対して、鹿児島大学の秋葉澄伯委員は「本当に過剰に見つけているのか、福島県立医科大学は認めてないんじゃないか」と指摘。獨協大学の木村真三委員は、自身が視察しているチェルノブイリ原発事故後のベラルーシやウクライナの経験を話して、甲状腺がんは進行性の遅いがんで、予後の良いがんであるとの話を否定。「原発事故由来の甲状腺がんは違うもの。チェルノブイリを視察している臨床医を加えて議論しなければいけない」と訴えた。また、福島県「県民健康調査」については、受診率の低下や、「経過観察」後に甲状腺がんと診断された患者の症例把握が出来ていないことを説明し、福島県の検査結果の発表方法に疑問を呈した。
「新潟県で福島原発事故の健康影響の検証本格化」(ourplanet)より転載
投稿者: ourplanet 投稿日時: 日, 02/06/2018 – 08:40
新潟県は5日、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動を巡り、福島第一原発事故による健康影響を検証する「健康分科会」の第2回会合を開いた。福島県が行っている「県民健康調査」や甲状腺がんについて、委員の意見が対立。今後、国や福島県の報告書にはないような資料も含めて、独自の検証を進めていく方針だ。
会議ではまず、獨協大学の木村真三委員が、放射線による被曝影響だけでなく、メンタルヘルスなど、原発事故がもたらす健康影響を包括的に議論しなければ事故の矮小化に繋がると指摘。新潟青陵大学の鈴木宏座長も今後、議論の枠組みに入れるのか知事の考えを確認していく方針を示した。
甲状腺がんをめぐり意見白熱
最も時間をかけたのは、福島県「県民健康調査」や甲状腺がんをめぐる議論だ。新潟大学の中村和利委員は、福島での検診をめぐり、「過剰診断」や、「検査の不利益」といった議論があることを指摘。さらに新潟大学の青山英史委員は、福島県「県民健康調査」検討委員会の中間とりまとめを参考に、甲状腺がんは生命予後のよいがんであるとの立場に立った。
これに対して、鹿児島大学の秋葉澄伯委員は「本当に過剰に見つけているのか、福島県立医科大学は認めてないんじゃないか」と指摘。他の地域で原発を再稼動する際には、事故後、子どもたちの内部被曝を把握出来るようにする検査体制の準備をするべきでないかと提案した。
資料5 福島県「県民健康調査における中間とりまとめ」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai.html
木村委員は、自身が視察しているチェルノブイリ原発事故後のベラルーシや、ウクライナの経験を話して、甲状腺がんは進行性の遅いがんで、予後の良いがんであるとの話を否定。「原発事故由来の甲状腺がんは違うもの。チェルノブイリを視察している臨床医を加えて議論しなければいけない」と訴えた。また、福島県「県民健康調査」については、受診率の低下や、「経過観察」後に甲状腺がんと診断された患者の症例把握が出来ていないことを説明し、福島県の検査結果の発表方法に疑問を呈した。
鈴木座長は、メディアの取材に対して、今後チェルノブイリ原発事故に関わる資料なども集めて、国や福島県の報告書にないような独自の検証も行うとの方針を示した。
新潟県「健康分科会」とは
この分科会は、新潟県の米山知事が選挙公約に掲げていた福島第一原発事故を検証する検証委員会の中のひとつである「健康と生活への影響に関する検証委員会」に昨年8月に設置されたもの。柏崎刈羽原発は原子力規制委員会による適合性審査に合格しているが、米山知事は、検証が終わらなければ再稼働は議論できないとしている。検証委員会は、今後それぞれ年に4回程度の頻度で開催されて、3~4年後に結果を取りまとめる方針だ。
新潟県「健康分科会」メンバー
委員:青山 英史 新潟大学医学部 教授 放射線医学
秋葉 澄伯 鹿児島大学 名誉教授 疫学・公衆衛生学
木村 真三 獨協医科大学 准教授 放射線衛生学
鈴木 宏 新潟青陵大学 副学長 疫学・公衆衛生学(座長)
中村 和利 新潟大学医学部 教授 疫学・予防医学(副座長)
会議資料
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/813/595/180205kenko-siryou_15…
関連動画
福島の甲状腺がん解明へ〜新潟県「健康分科会」検討開始
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2166
福島の甲状腺がん解明へ〜新潟県「健康分科会」検討開始
「東京電力福島第一原子力発電所事故の徹底的な検証がなされない限り、柏崎刈羽原発の再稼働はない」
新潟県の米山知事が選挙公約に掲げていた福島第一原発事故を検証する3つの検証委員会がいよいよスタートした。福島原発事故からちょうど6年6ヶ月目にあたる9月11日に初会合が開かれたのは、米山知事のカラーが最も強いとされる「健康・生活委員会」。米山知事は冒頭で「(福島事故について)きちんとした総括をここでしないでいつするのか。」と発言。3〜4年かけて、福島原発事故に関する徹底検証を行い、出された検証結果は、福島県をはじめ、原発立地県、全国、世界で共有したいと強調した。
米山知事の挨拶と「健康・生活委員会」
11日開かれた「健康・生活委員会」は、米山知事が公約に掲げた福島第一原発事故の「事故原因の検証」と「避難方法の検証」に並ぶ3検証委員会のひとつで、福島原発事故による健康や生活への影響を検証する。委員長には新潟青陵大学副学長で、感染症などの公衆衛生を専門とする鈴木宏教授、副委員長には、新潟大学副学長で、被災者コミュニティなどを研究している松井克浩教授が就任した。
健康分科会では「県民健康調査」を検証
この日は、「健康・生活委員会」で委員会の趣旨を説明した後、「健康分科会」と「生活分科会」の2つの分科会に分かれ、議論の進め方について意見交換を行った。放射線被曝による健康影響を検証する「健康分科会」では、福島県が行っている県民健康調査の検証に加え、文献調査を実施するかどうか。また検証範囲をどこまで広げるかなどをめぐり、委員の間で活発な議論が交わされた。
健康分科会
福島県民健康調査をめぐっては、注目を集めている甲状腺がんに関する評価も行うこととしており、委員のひとり、木村真三獨協大学准教授は会議後のインタビューで、福島県医大が公表していない「経過観察中」のデータや手術症例なども開示を求めていく考えを示した。次回の開催は、12月以降となる見込みで、必要の応じて、委員以外の専門家も招致するという。
木村真三委員のぶら下がり
配布資料
http://www.pref.niigata.lg.jp/shinsaifukkoushien/1356877690191.html
「新潟県原子力発電所事故による健康と生活への影響に関する検証委員会」
健康分科会
青山英史(新潟大学医学部 教授)放射線医学
秋葉澄伯(鹿児島大学 名誉教授)疫学・公衆衛生学
木村 真三(獨協医科大学 准教授)放射線衛生学
◎鈴木 宏(新潟青陵大学 副学長)疫学・公衆衛生学
○中村 和利(新潟大学医学部 教授)疫学・予防医学
生活分科会
丹波史紀(立命館大学産業社会学部人間福祉専攻准教授)社会福祉
◎松井 克浩(新潟大学副学長・人文学部教授)社会学
松田 曜子(長岡技術科学大学環境社会基盤工学専攻准教授)防災学
除本 理史(大阪市立大学大学院教授)環境経済学
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