福島県 卵巣がん2年連続、胃がん3年連続「有意に多発」

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「全国がん登録」最新データ公表 福島県で胃がんは3年連続で「有意に多発」していた
(2018年10月5日 Level7 NEWS 明石昇二郎)より抜粋

胃がんは3年連続で「有意に多発」
最新の2014年「全国がん罹患モニタリング集計」データが、国立がん研究センターのホームページ上で公開されたのは、9月15日(土)のことである。

日本のがん罹患率は、5歳ごとの年齢階級別に集計されており、人口10万人当たり何人発症しているかという「人数」で表わされる。

まずは、2013年の段階ですでに多発が確認されていた「胃がん」について、改めて検証することにした。全国の「胃がん年齢階級別罹患率」と福島県の同罹患率を比較してみたのが、次の【表1】だ。男女ともにさまざまな年齢層で全国平均を上回っている年齢階級が散見される。


【表1】「胃がん」年齢階級別罹患率(福島県・全国)(人口10万対)


次に、全国と同じ割合で福島県でも胃がんが発生していると仮定して、実際の罹患数と比較してみる検証を行なってみた。疫学(えきがく)の手法で、「標準化罹患率比」(標準化発生率比ともいう。略称は「SIR」)を計算する方法だ。全国平均を100として、それより高ければ全国平均以上、低ければ全国平均以下を意味する。

福島県の胃がんについて、2008年から2014年までのSIRを計算してみた結果は、次の【表2】のとおり。

2011年を境に、男女とも全国平均を大きく超えてしまっている。ちなみに国立がん研究センターでは、SIRが110を超えると「がん発症率が高い県」と捉えているようだ。

そこで、このSIRの「95%信頼区間」を求めてみた。いよいよ疫学の専門領域に突入するわけだが、一般向けに分かりやすく言えば、それぞれのSIRの上限(正確には「推定値の上限」)と下限(同「推定値の下限」)を計算して出し、下限が100を超えていれば、単に増加しているだけではなく、「統計的に有意な多発」(=確率的に「偶然」とは考えにくい多発)であることを意味する。

その結果は次の【表3】のとおり。福島県では、2012年と2013年に引き続き、2014年も胃がんが男女ともに「有意に多発」していた。3年連続の「多発」である。

甲状腺がんは男性で「有意に多発」
2013年までの時点で、SIRが100を超えている年があるがんには、ここまで検証してきた胃がん、悪性リンパ腫、白血病に加え、甲状腺がん(男女)、直腸がん(男)、多発性骨髄腫(男)、前立腺がん(男)、胆のう・胆管がん(男女)、卵巣がん(女)があった。

若年層における多発が懸念されている「甲状腺がん」だが、SIRとその「95%信頼区間」を求めた結果が次の【表6】である。

罹患数が増加し続けた結果、2014年の男性でついに「有意に多発」するに至っていた。女性にしても、SIRは年々上昇している。参考までに、全国の「甲状腺がん年齢階級別罹患率」と福島県の同罹患率を比較したものも【表7】として示しておく。東京電力福島第一原発事故後、福島県が県内全ての子ども約38万人を対象に実施している甲状腺検査を受けていない年代にも、甲状腺がんが増えてきているのがわかる。


【表7】「甲状腺がん」年齢階級別罹患率(福島県・全国)(人口10万対)

「卵巣がん」は、2013年、2014年の女性で「有意に多発」している【表10】。明らかな増加傾向にあり、罹患数もあと少しで200を超えてしまいそうな勢いだ。

最後にもう一つ、気になるデータを紹介しておく。全国の「全がん年齢階級別罹患率」と福島県の同罹患率を比較したもの【表11】と、そのSIR【表12】である。

これは、すべての部位のがんを合計し、罹患率を弾き出したものだ。見ると、2011年以降は罹患数もSIRも右肩上がりで増え続けている。


【表11】「全部位がん」年齢階級別罹患率(福島県・全国)(人口10万対)

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