◆子どもの保養・移住先探し・各地で相談会
悩み 抱え込まないで「被災者分断されないように」
(2015年11月22日 朝日新聞)
東京電力福島第一原発事故の被災者の保養や移住を全国各地で受け入れてきた団体で組織する「311受入全国協議会」(うけいれ全国)の活動が4年目に入った。被災地で相談会を開いて家族の悩みを聞き、子どもたちの訴えに耳を澄まし、様々な支援制度のことを伝えてきた。避難する人、移住する人、故郷にとどまる人。それぞれに手を差し伸べ続けている。
311受入全国協議会 活動4年目
今月7日、相馬市総合福祉会館で開かれた「ほよ~ん相談会」。北海道から沖縄までの22団体のブースと資料が用意され、数十人のスタッフらが相談者を待ち構えた。
「子どもを外で思いきり遊ばせられる場所がほしい」。市内の染谷明香さん(30)は会社員の夫鉄平さん(30)とやってきた。市は除染をしてくれたが、1歳3か月の長男航平ちゃんが粉じんを吸い込まないか心配で、保養企画についてスタッフから説明を聞いた。「小さな子どもは砂を口に居れたりもするし、なかなか安心はできません」
小学生の孫2人を連れて新地町からやってきた斎藤みさをさん(57)も、保養企画に関心がある。「家を流されたり、放射能で帰れなかったりしている人も、保養さ行けば癒やされる」
相談会は翌8日も郡山市で開かれ、ちょうど30回に。2日間で約130家族の400人ほどが訪れた。
協議会が結成されたのは2012年9月。共同代表である札幌市のフリーライターみかみめぐるさん(61)が「多様なニーズに応じられる有機的な支援を」と各地の支援団体に呼びかけた。
みかみさんは原発事故直後から、北海道に殺到する避難者への住宅のあっせんや生活支援をしていた。「避難したくてもできない人たちの生の声を現地で聴いてほしい」と頼まれ、秋ごろから福島市や郡山市の喫茶店やファミリーレストランで小さな集まりをもち、若い母親たちの悩みに耳を傾けるように。その中で、支援団体同士がつながる必要性を強く感じた。
やはり共同代表で、相談活動に携わってきた早尾貴紀・東京経済大准教授(42)は、自身も避難者だ。
小学生の長男を連れて仙台から関西、山梨県へと転居を繰り返した。パレスチナ難民問題にも取り組んできた社会学者で、「自らのディアスポラ(離散の民)としての体験が協議会の活動を支えている」と話す。
原発事故から4年半余。各団体を支える募金、行政や企業・財団からの助成金は、どちらも下火になっている。
しかし、寄せられる相談件数は減ってはいない。加盟団体数も当初の23から55へと、むしろ増えている。
みかみさんは「今もこれだけの団体が多様な支援企画を準備して、福島の皆さんを待っていることをまずは知ってほしい」と話す。そういう意味でも、相談会は大切な活動の一つだ。「悩みや心配を抱え込んだり、語ることをがまんしたりする必要はない」
自主避難者に対する住宅無償提供の打ち切りや、避難先から県内に戻る引っ越し費用の補助-。いわき市で支援に関わっている30代の女性の目には、そうした政策の一つ一つが「帰還誘導策ばかりが打ち出されている」ように映る。「復興に頑張る人、やっぱり避難したい人。地元で暮らす私には双方の気持ちが分かる。被災者同士が分断されて対立しないよう、どんな道を選んでも支援を受けられるようお手伝いしたい」
(本田雅和)
※311受入全国協議会(うけいれ全国)
http://www.311ukeire.net/index.html
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